消石灰を輸送したタンクローリーのタンク内を清掃していた作業者が酸素欠乏症にかかる
業種 | 一般貨物自動車運送業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 保護帽を備え付けていない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100856
発生状況
この災害は、消石灰を輸送したタンクローリーのタンク内を清掃していた作業者が、タンク内に残留していた低酸素空気により酸欠状態となり被災したものである。災害発生当日、被災者はタンクローリーで消石灰を搬送先である製鉄工場に搬入した。この際、粉体である消石灰の品質を保持しながら排出するために、窒素ガスをタンク内に吹き込みながら作業を行った。作業開始1時間後、被災者は搬入先での作業を終え、タンクローリーで自社事業場に戻った。被災者はまずタンクローリーを事業場内の駐車場に駐車し、タンクローリー上部前方にあるマンホールを開放後、しばらく経過してからタンクローリーの清掃を開始した。
被災者は、まずタンクローリー外部の清掃を行い、引き続きタンク内部の清掃をするため、通常の作業手順に従い小型掃除機を持ってタンクに入った。その後、すぐに被災者は気分が悪くなったため、急いでタンク外に出ようとしたが、その際にマンホールの縁で頭部を打撲した。被災者はタンクローリー上部で10分程度休息し、その後タンクローリー脇に下りたが、気分が優れず座っているところを別の作業者に発見された。
なお、被災者は事業所の車で近くの病院に運ばれ、酸素欠乏症及び頭部打撲と診断された。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | タンク内の清掃を行う際に十分な換気を行わなかったこと。また作業手順書がなかったこと。 被災者は複数あるタンクローリーのマンホールをひとつだけ開放し、しばらくの間放置すれば十分にタンク内の換気が行えたものと思い、送風機等による換気作業を行わなかった。また送風機は準備されていなかった。この結果、タンク内には相当量の窒素ガスが残留していた。 |
2 | 酸素欠乏のおそれのあるタンク内への立ち入りに際し、酸素濃度の確認等を行わなかったこと。 タンク内は酸素欠乏のおそれのある場所であるが、作業を開始するにあたり、作業環境測定などによりタンク内の酸素濃度を測定することなく作業を開始した。 |
3 | タンク内の作業にあたって酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場での作業指揮を行わせなかったこと。 この作業は換気の悪いタンク内の作業であるため酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場において作業の指揮を行わせる必要があった。しかしながら災害が発生した事業所には酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者はいなかった。 |
4 | 酸素欠乏作業を行う作業者に特別教育を行っていなかったこと。 災害の発生した事業所ではタンクローリーを20台以上所有し、タンク内清掃作業は タンクローリーを運転する作業者がそれぞれ行なうこととなっていた。しかしこれら作業者に対する特別教育は行われておらず、また事業者も酸素欠乏危険作業に対する認識はなかった。 |
5 | 作業にあたり保護帽(ヘルメット)を着用していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | タンク内において清掃等の作業を行う際には、十分な換気を行うこと。またこれらの手順を示した作業手順書を作成すること。 タンク等、換気が悪く酸素欠乏の危険がある場所では、作業前に送風機等を使用し十分にタンク内の換気を行うとともに、作業中も送風機を用い継続的に外気の導入を行うこと。 |
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2 | 酸素欠乏のおそれのある場所で作業を行う際には、事前に酸素濃度の測定を行うこと タンク内は酸素欠乏のおそれのある場所であるため、作業を開始するにあたり、作業環境測定などによりタンク内の酸素濃度を測定すること。 |
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3 | タンク内で作業を行う場合には酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場での作業指揮を行わせること。 酸素欠乏危険作業を行う場合には、酸素欠乏作業主任者技能講習修了者の中から酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場において作業の指揮を行わせること。 |
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4 | 酸素欠乏危険作業を行う作業者には特別教育を行わせること タンク内清掃作業を行う作業者に対しては事前に酸素欠乏危険作業の危険性等に関する特別教育を行うこと。また、関連する作業手順書についても併せて周知徹底すること。 |
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5 | 作業を行う際には保護帽(ヘルメット)を着用すること。 |