化学工場でヤシ殻から活性炭を製造する工程において臨時に行われていた作業中、火災が発生し火傷を負う
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | チームワーク | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.100847
発生状況
この災害は、化学工場のヤシ殻から活性炭を製造する工程において行われていた臨時の作業において発生したものである。
災害が発生した工程は、活性炭の原料となるヤシ殻をドラム状の連続焼成装置(ロータリーキルン)で加熱しながら焼成・搬送し、最終的に活性炭を作る工程であった。 災害発生当日、ロータリーキルンの付属装置で、活性炭を生成する際の副産物(活性炭の粉とこれが燃焼した灰の混合物)を排出するバルブが故障したため、作業者が装置の点検を行ったところ、堆積していた副産物の量が予想以上に多く、通常のかき出し作業では一気に堆積した副産物が落下するおそれがあると判断された。このため、代わりに臨時に設けた排出口(点検口)により副産物をかき出す作業を行うこととした。 この作業はロータリーキルンの点検口からトタン板を斜めに固定した仮設の樋の上を伝って一階に準備した袋の中に移すもので、当日は作業員が交代で副産物をかき出す作業にあたっていた。副産物のかき出しを始めて30分後、かき出しに使用していたトタン板上をすべり落ちていた副産物が空気中に舞い上がり、着火し作業場1階天井付近で火の粉となった。この火の粉は2階の網目状であった床および開口部から吹き上がり、2階にいた作業員3名がやけどを負ったものである。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 設置した仮設の施設は外気に開放されており、副産物中の未燃焼で高温の活性炭が外気に直接触れ着火したこと。 副産物に対して散水等は行われていたが量が十分ではなく、有効な着火防止対策とはなっていなかった。 |
2 | 運転中の連続焼成装置において装置を止めることなく作業手準がない作業を行ったこと。 災害の発生した作業は従来経験がない作業であり、本来であればラインを停止し、副産物のかき出し作業をすべきであったがこれを行わず作業を継続させた。また作業員がこの作業を行うにあたり準拠すべき作業手準も作成されていなかった。 |
3 | 非定常作業を行うにあたり、作業前に関係者間で安全面を含め作業について十分な協議がなされていなかったこと。 この結果、活性炭粉じんによる火の粉が隣接の作業場所において作業していた作業員の元へ飛散することとなった。 |
4 | 材料への着火等、作業者が熱源に触れることが十分に予想されたにもかかわらず作業者に適切な耐火性の衣類、保護具等を着用させなかったこと。 被災した3名の作業者はいずれも保護帽、作業服、安全靴、ゴム手袋、防じんマスクを着用していたが耐熱エプロンおよび防火服等の装備は着用していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 臨時の作業であっても安全対策に重点をおいた作業手準を作成し、作業者等関係者に対し周知徹底を図ること。 装置の故障ならびに予想以上の副産物の堆積等、作業中に予測していなかった事態が発生し、対応が必要となった場合には、作業者の安全を第一に考え、副産物の撤去等臨時の作業前にラインの一時停止等必要な措置を講じる。 |
2 | 臨時の作業を行う前には作成した作業手順等をもとに安全面について、作業者、作業監督者間で十分に協議すること。 特に複数の作業者で非定常作業を行う場合には関係者間の意思の疎通が重要であり、不測の事態についても十分に検討を行い関係者間で意思の統一を図る。 |
3 | 燃焼性粉じんの取り扱い等、作業者が熱源に触れることが予想される作業においては作業者に適切な耐火性の衣類、保護具等を着用させること。 また、近くで作業を行っている他の作業者については安全な場所に待機させる等の措置を講じる。 |
4 | 燃焼性粉じんの取り扱い作業等においては材料の着火に備え、装置を遮へいする等の措置を講じるとともに粉じん爆発等についても対策を講じること。 着火を予防するために副産物等に対して散水を行う場合には副産物が完全に湿潤化し、放熱するまで散水する必要がある。 |