コークス製造炉の石炭粉移送用チェーンコンベアの故障点検中、石炭粉が噴出して着火爆燃
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 合図なしに物を動かし又は放す |
No.100843
発生状況
この災害は、コークス製造炉の上部に設置されていた石炭粉の搬送・投入用のチェーンコンベアの故障箇所を点検・修理中、点検口から微細の石炭粉が大量に噴出して燃焼し、作業員が火傷を負ったものである。
事故を起こしたコークス炉は、石炭を蒸し焼きにする炭化室とその熱源を供給する燃焼室からなっている。この燃焼室からの燃焼ガスは、炭化室を通ったのちチェーンコンベア近くに設置されている直立した排気管(直径70cm)を通って大気に放出するようになっている。また、この排気管の上部にはカバーがついており、燃焼ガスが炭化室を通って来るときに、舞い上がった炭化物がこのカバーに付着するので、定期的に開放して炭化物を燃焼・除去する必要があった。 災害発生当日、微粉炭を搬送するチェーンコンベアの一部が故障したため、チェーンを取り替えることになった。コンベアを停止し点検口を開けたのち、故障箇所を確認すべく、コンベアを動かしたとき、点検口から大量の微粉炭が舞い上がった。一方、コンベアの近くで燃焼ガスの排気管の上部カバーを外して、炭化物残渣の燃焼処理作業を行っていたため、その火炎が舞い上がった微粉炭に着火し、爆発的に燃焼し、修理にあたっていた4人の作業員が火傷を負った。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | コンベアの点検口を開放したのち、石炭粉移送用のチェーンコンベアの故障箇所を確認するためにコンベアを動かしたので、点検口から大量の微粉炭(直径数百マイクロメ−トル)が周囲に舞い上がったこと。 |
2 | 石炭粉の炭化に使用した燃焼ガスを排出管上部のカバーを外して付着した炭化物を燃焼させていたため、その火炎がコンベアから飛散した微粉炭に着火・爆燃したこと。
燃焼ガス排出管はコークス炉上のコンベアから9mほど離れた場所に設置されていた。 |
3 | 微粉炭が発生するおそれのある点検・修理作業と火炎が発生する燃焼管の炭化物処理作業とを同時に実施したこと。 |
4 | 微粉炭が空気中に広く分散した場合、容易に着火し、燃焼・爆発することを十分に理解していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | コークス製造炉など石炭粉を大量に取扱う場所は、微粉炭が舞い上がることが多いため、余分な微粉炭の除去・清掃を徹底すること。 |
2 | 微粉状の石炭粉を移送するコンベアなどの設備を修理・改造する場合には、石炭粉じんが周囲に飛散することを考え、周辺の火気の使用を禁止すること。
特に、同じ作業現場で火気使用作業を行う場合は、事前の作業手順を決め、連絡調整を充分に行うこと。 |
3 | 石炭粉が数百マイクロメートルといった微細になったものは、非常に飛散しやすく広い空間において爆発範囲の粉じん雲が生じ、電気火花などの点火源により容易に着火・爆発する危険性について関係者に周知徹底すること。 |
4 | 修理・改造などの非定常作業の安全管理を徹底すること。
作業計画の段階で、安全の事前評価を行い、災害の種類、危険の発生場所などを予測して、安全な作業方法および作業手順を定めるとともに、安全教育を実施して、安全意識の高揚を図る必要がある。 |