焼酎原酒タンク上部蓋付近でアーク溶接作業中、タンク内のアルコール蒸気が発火爆発
業種 | 酒類製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他保護具を指定していない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100839
発生状況
この災害は、焼酎製造工場において、原酒貯蔵タンク上部の蓋付近に、盗難防止用のリミットスイッチ取付け工事中、タンク内で爆発したものである。
この工場には原酒(アルコール濃度約40%)の貯蔵タンク(内容積:49m3 )3基が屋外に設置してあり、タンクの上部には1箇所づつ蓋が付いている。部外者による原酒の盗難防止用にタンクの蓋を開けると警備会社に通報されるようにするため、警備会社でリミットスイッチを取り付けることになり、工務課でリミットスイッチ設置用の架台を作って蓋の付近に取り付けることになった。 災害発生当日、工務課のA、B2名の作業者は、朝から長さ約20cmのL字型のステンレス製の架台2個を加工し、午後4時頃から取付け作業を開始した。Aは部品の一部に不都合があったので、手直しするために工場に戻ったが、Bはそのまま、作業を続けた。 Bはタンク上部に登り、小型直流アーク溶接機によるアルゴン溶接によって、架台の溶接を始めたが、しばらくして突然タンク内で爆発が起き、タンク上部の鏡板とともに20m以上吹き飛ばされて死亡した。 なお、タンクには容積の半分(約23m3 )の原酒が入っていて、夏期であったために、タンク内上部の空間には気化したアルコールが空気と混在していたと推定される。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 焼酎原酒から気化したアルコール蒸気がタンク上部空間部に滞留し、その濃度が5〜8%となって爆発範囲に入り、爆発性混合気体が生成していたこと。 |
2 | タンク上部でアーク溶接を行ったとき、ステンレス製タンクの温度が、エチルアルコールの発火温度363℃を超えたこと。 |
3 | タンクの加熱により、タンク内部の原酒から気化したエチルアルコールが発火して爆発し、タンク上部で作業中の作業員が爆風により吹き飛ばされたこと。 |
4 | 管理責任者がエチルアルコールの爆発危険性について知識がなく、作業員に安全作業方法について指示しなかったこと。 |
5 | 非定常作業における安全管理が不十分であったこと。
タンク等化学設備の改修における溶切断作業は爆発危険性が非常に高いにもかかわらず、事前評価がなされておらず、また作業手順が定められていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 高濃度の原酒など引火性液体の入ったタンクやドラムでは、原則として火気を使用する作業を行わないこと。 |
2 | この種の容器をアーク溶接機で加熱・切断する作業を行うときは、十分な換気を行い、存在する可燃性ガス・蒸気の濃度を爆発下限界の4分の1以下であることを確認しておくこと。換気が有効でない場合は、不活性ガス等を封入しておくことも考慮すること。 |
3 | 修理・改造などの非定常作業の安全管理を徹底すること。
作業計画の段階で、安全の事前評価を行い、災害の種類、危険の発生場所などを予測して、安全な作業方法および作業手順を定めて関係作業者に周知徹底するとともに、安全教育を実施して、安全意識の高揚を図る必要がある。 |