オフセット印刷機で印刷作業中、都市ガスを燃料とする乾燥設備が爆発
業種 | 印刷業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 乾燥設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置の調整を誤る |
No.100838
発生状況
この災害は、オフセット印刷機を使用して広告用チラシを印刷作業中、印刷物の乾燥工程において、乾燥設備が爆発したものである。
この会社で使用しているオフセット印刷機は、給紙→印刷→乾燥→冷却→折加工が自動で行われる。 乾燥工程は乾燥装置と脱臭装置からなり、乾燥装置(幅約1m、長さ約7m)の真上に設置されている燃焼室(容積が約0.5m3 )で、毎時11m3 の都市ガス(主成分:メタン)を燃焼させて作られる約200℃の熱風を上下のノズルから印刷物に直接当てて乾燥するようになっている。 災害発生当日、朝から印刷作業を始めたが、午後になって何回か印刷用輪転機に異常があり停止した。なお、輪転機に異常があると乾燥工程も自動的に停止するようになっている。 17時45分頃、輪転機の紙継ぎに失敗したため印刷工程全体を止めたのち、印刷紙のセットのやり直しを行った。約15分後に乾燥設備内の温度が一定以上になったことを確認したのち、運転を再開すべく順次操作ボタンを押してチラシ紙の印刷を開始した。その後、5分程経過して突然、乾燥装置付近で爆発が生じ、2名の作業員が負傷した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 燃焼室のバーナが供給ガス圧または供給空気圧の変動により失火したため、未燃焼の都市ガスが乾燥装置および脱臭装置内に流出したこと。 |
2 | バーナの火炎を検出するUVセンサー(紫外線火炎検出装置)が作動不良になったため、バーナが失火したことを検知できなかったこと。 |
3 | 二重の安全装置として設置されていた火炎検出用の熱電対による温度検出器が無効にされていたこと。 |
4 | 脱臭装置のバーナの火炎または印刷工程、乾燥工程内の静電気などの電気火花により、都市ガスの爆発性混合気体が着火し、爆発したこと。 |
5 | 事業場において燃料ガスを用いる乾燥装置内の爆発危険に関する認識が不十分であったこと。 |
6 | 燃料ガスを用いる乾燥設備の爆発防止に関する作業主任者の選任等、安全管理体制が不十分であったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 乾燥装置の燃焼室のバーナの失火を検知するUV検出センサーなどセンサーの点検・清掃および交換を定期的に行い、かつ作業中にセンサーの異常が発生した場合は、確実に調整または交換を行うこと。 |
2 | 乾燥装置の燃焼室のバーナ火炎検出には、2種類以上の検出装置を用いることが望ましく、また両方の検出装置を常に作動させておくこと。 |
3 | 火炎検出センサーが異常を示したときは、燃料ガスの供給をすみやかに遮断するとともに、未燃焼ガスを外部の安全な場所にパージできる構造とすること。 |
4 | 燃焼室は、バーナおよび火炎検出装置など安全装置が容易に点検できるような構造にしておくこと。 |
5 | 乾燥設備の熱源に可燃性ガスを用いる場合は、爆発危険性およびバーナ失火時の対応について十分な教育・訓練を実施しておくこと。 |
6 | 安全管理体制を整備し、安全管理を徹底すること。
可燃性ガスなどの燃料を熱源とする乾燥設備については、乾燥設備作業主任者を選任するとともに、乾燥設備の爆発危険性などに関する安全教育も十分に行うこと。 |