プロパンガス集中配管設備の配管を掘削した孔内で手直し作業中、作業者が噴出したガスにより酸素欠乏症となり死亡
業種 | 燃料小売業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 確認しないで次の動作をする |
No.100836
発生状況
この災害は、住宅の敷地内を掘削し、プロパンガス集中供給設備のガス配管接続作業で発生したものである。
この作業は、住宅地のプロパンガス集中供給設備の地中配管が老朽化したため、主管と引き込み管の取り替え工事を行ったところ、埋め戻し後に一戸だけガスが出ないことが判ったため、引き込み管と家庭内配管の接続場所を掘削し繋ぎ換えを行ったものである。 被災者はプロパンガスの販売を行う事業場の販売主任であり、ガス配管工事の資格である「液化石油ガス整備士」と「簡易ガス事業調査員」の資格を有しているが、通常は工事の監督と検査の立ち会いを行っている。 災害発生当日、被災者は災害発生場所で掘削作業者2名に掘削場所の指示を与え、現場を離れた。掘削作業者は、家の中のコンクリートを剥がし、スコップで地面を約1m掘削しガス管の接続部を露出させた。昼前に、被災者から掘削作業者に携帯電話で食事に行って1時に戻るように指示があったので、現場を離れ1時に現場に戻ったところ、切断された引き込み管からガスが噴出しており、被災者が穴の中で意識を失っているのが発見された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ガスの供給を止めないで、ガス配管接続換え作業を実施したこと。
簡易ガス供給設備は、災害発生場所から約60m離れたガスボンベ収納庫から内径30mmの主管を経て内径25mmの引き込み管が災害発生現場まで配管されている。ここで家庭内配管に接続されるものであるが、災害発生時引き込み管までガスが供給されていた。 ガス配管接続換え作業は、通常、元栓を止めてガスの供給を停止した状態で行うが、被災者はガス工事の知識があり、手際よくやればほとんどガス漏れなしで作業できると判断した。ガスの元栓を止めればすべての住宅への供給が止まり、また、引き込み管でガスを止めれば3戸のガスが止まるため、顧客の利便性を優先させた。 |
2 | 接続用継ぎ手を誤って繋ぎ、引き込み管の先端の蓋を切り落としたため、プロパンガスが噴出し、掘削孔内に酸素欠乏空気が充満したこと。
ガスを止めることなく、配管の接続替えを行えば、手際よく行ってもプロパンガスは短時間噴出するが、作業を誤ったため、短時間にプロパンガスが大量に噴出し、深さ1mの掘削孔内が酸素欠乏状態となって、脱出することができなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 短時間の作業であってもガス管の繋ぎ換え作業を行うときは、確実にガスの供給を止めて行うこと。
地面下のガス管の繋ぎ換え作業は、掘削孔は深さ約1mほどであっても、人1人がやっとしゃがめる程度で狭く、しかもガスの配管が孔底に近いと、ガスが流出したとき孔内に滞留し易く、作業姿勢によってはガスを直接吸いやすいので、換気したとしても危険性が高い。 少量であってもガスの漏出を前提とした作業方法は実施しないようにすることを徹底しなくてはならない。 |
2 | 安全作業基準を作成し、関係者に周知するとともに、現場の安全管理を徹底すること。
掘削孔などの通風が不十分な箇所において、ガス管の取り付け、取り外しなどの作業を行う場合には、ガスの遮断、換気、空気呼吸器等の使用などの措置を講じる必要がある。 酸素欠乏危険のおそれのある作業であることを認識し、監視人を配置し、1人作業は禁止することが大切である。 |
3 | 関係作業者の安全衛生教育を実施すること。
酸素欠乏の発生の原因、酸素欠乏症の症状、空気呼吸器等の使用の方法、事故の場合の退避および救急蘇生の方法その他酸素欠乏症の防止に関し必要な事項について教育する必要がある。 |