ハードボード製造設備に詰まった原料の除去作業中、噴出した原料を浴びて熱傷を負う
業種 | その他のパルプ・紙・紙加工品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100833
発生状況
この災害は、ハードボード製造工程において原料の詰まりを取り除く作業中に発生したものである。
ハードボード製造工程では、蒸煮された原料チップを繊維状に裁断後、蒸気圧によりサイクロンに搬送し、蒸気とファイバーに分離する。その後、ファイバーに水を加えてパルプ状にし、サイクロン下部に位置するパルプボックスを経て下方にある受槽にパルプ液を落とし込んでストックし、必要量を成型機に供給してハードボードを製造するものである。 災害が発生した日、被災者は、パルプボックス下部の点検口の蓋を開き、パルプ液の受槽への落し込み状況を点検したところ水だけが落下していたので、工程責任者にその旨を報告した。報告を受けた工程責任者は、蒸気によるチップのサイクロンへの搬送を停止した。 被災者が、パルプボックスの上部点検口を開き、内部をのぞいたところ、サイクロンとパルプボックス間にファイバーが詰まっているのを見つけた。そのため、被災者が鋼製パイプを使って詰まったファイバーを突いたところ、パルプボックス上部点検口からファイバーが噴出し、熱傷を負った。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 蒸煮されたファイバーがサイクロン内に送給された際、水とファイバーが混合されてパルプ状になる前に、ファイバーの状態のままサイクロンの出口側で詰まったこと。 |
2 | サイクロン内でファイバーが詰まったことにより、加熱蒸煮されたファイバーが放熱されないまま蓄熱されて高温の状態となっていたこと。 |
3 | 詰まったファイバーをサイクロン下方にあるパルプボックス側から鋼製パイプで突いたことにより、高温のファイバーがパルプボックス点検口から噴出したこと。 |
4 | サイクロン内への水の供給量、温度管理などの作業標準が定められていなかったため、これらの管理が担当者の経験に委ねられて行われていたこと。 |
5 | 詰まったファイバーを処理するための作業手順が定められていなかったため、その都度作業員の判断により処理が行われていたこと。 |
6 | 安全管理体制が整備されていなかったため、作業標準、作業手順などの作成およびそのチェックなどを組織的に実施する機能がなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ファイバーが詰まらないように水量を増量し、容易にパルプ液化するように改善すること。 |
2 | サイクロンへの水の供給量およびサイクロン内の温度を管理するための流量計、温度計を取り付け、異常警報装置を設けること。 |
3 | ファイバーが詰まったとき、またはサイクロン内が異常に温度上昇したとき、自動的にファイバーの供給を停止することのできる設備的な改善を行うこと。 |
4 | ファイバーが詰まったときの除去作業について、ファイバーの噴出による危険を考慮した作業方法、手順などを定めた作業手順を作成すること。 |
5 | サイクロンを改善し、ファイバーが詰まりにくい構造とすること。また、チップの裁断を細かくし、ファイバーの形状を微細化することによって詰まりにくいものとすることの検討も必要であること。 |
6 | 流量計、温度計および各種警報装置は、責任者および点検項目を定めて定期的に安全点検を実施すること。 |
7 | 職制に応じた安全管理責任を明確にし、作業手順、安全点検の実施が確実に行われるよう管理させること。 |