抗生物質を製造する反応工程において、ジオキサンの入った反応器に粉状の抗生物質の中間体を投入した時にジオキサンが爆発

業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30~99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100830
発生状況
この災害は、抗生物質を製造するため、液体の1,4-ジオキサン((CH2 CH2 O)2 )が入った反応容器中に粉状の抗生物質の中間体A(カルボン酸ジフェニル化合物)をフレキシブルコンテナ(フレコンバッグ)から投入した時、反応容器内でジオキサンの蒸気が爆発したものである。
この反応は、通常は26m3 の圧力容器中にジオキサンを供給したのち、別の溶解釜で溶解させた中間体Aを配管により移送し、一定の温度で加熱するものである。しかし、災害が発生した日の1ヶ月ほど前に中間体Aの溶解工程がトラブルを起こしたので、中間体Aは結晶化され、フレコンバッグ21袋に収納・保管されていた。 災害発生当日、中間体Aのフレコンバッグ21袋(1袋約250kg)のうち、7袋を反応容器に投入することとなった。クレーンでフレコンバッグを1袋ずつ吊り、反応容器のマンホール口まで運搬し、フレコンバッグ下部の排出口から中間体を投入していた。4袋めのフレコンバッグを投入していたとき、突然マンホール付近で爆発が起こり、火炎が噴出し、投入作業を行っていた2人の作業員が火傷を負った。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ジオキサンの温度が引火点12℃を超えていたため、中間体の粉体を投入したときに、その蒸気が空気と混合して、反応容器内に爆発性の混合気体を形成していたこと。 |
2 | フレコンバッグの素材に導電材料を使用していなかったため、粉体との接触により静電気がバッグ内面に帯電し、反応容器またはジオキサン液面に放電し、ジオキサンの蒸気が着火爆発したこと。 |
3 | 中間体の粉体の反応容器への投入速度が大きく、バッグ内に静電気が帯電しやすかったこと。 |
4 | フレコンバッグからの投入作業は、非定常作業であったため、作業手順が不明確で、また確実に遵守されなかったこと。 |
5 | フレコンバッグによる投入作業時おいて、作業服、作業靴、作業床が静電気防止の仕様でなかったこと。 |
6 | 安全管理が不十分であったこと。 作業方法を変更したときのリスクアセスメントが十分に行われていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ジオキサンは、常温で爆発性の混合気を生成するので、窒素など不活性雰囲気ガスで置換しておくこと。 |
2 | 爆発危険性の雰囲気下で使用するフレコンバッグは、導電性の素材を使用するか、または絶縁性の布地に導電性糸を織り込んだものを使用し、かつ接地を行うこと。 |
3 | 粉体の投入速度が大きいほど、フレコンバッグとの間で静電気の発生量が多くなるため、粉体の投入は時間をかけて行うこと。 |
4 | 爆発性の混合気が形成されている付近で静電気放電を防止するため、作業者の作業服、靴および作業床は帯電防止仕様のものとすること。 |
5 | 平常作業とは異なった作業を行うときは、リスクアセスメントを実施し、発生する危険の種類を加味した作業手順を作成し、遵守すること。 |
6 | 安全管理体制を整備し、安全管理を徹底するとともに、安全教育を実施して職場の安全意識の高揚を図ること。 |