下水道配管工事において、汚泥流入を防止する止水プラグの取り外し作業中、硫化水素中毒
業種 | 上下水道工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 上下水道工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100821
発生状況
この災害は、夏季に下水管と枝管の交換、敷設を行う公共工事の後片付け作業中に、下水配管内に仮置されていた止水プラグを取り外す際に発生したものである。
災害発生当日、作業者Aは災害が発生したマンホールの垂直はしごを使ってマンホールの底部まで降り、止水プラグのエアーを徐々に抜くためにノズルのコックを半開放した。このとき被災者は、汚水や汚泥が一気に流れ出さないようにコックの開放度を調整しながら止水プラグを足で押さえていた。2〜3分後、被災者Aは垂直はしごを使って現場から脱出を試みたが、はしごに足をかけようとした瞬間、膝を折るように崩れ落ち現場に倒れ込んだ。 作業者Aの倒れ込んだ位置がマンホールの下流方向への排水口付近で排水口を塞いだため、止水プラグ側から流入した汚水や汚泥が倒れている作業者Aの胸元まで達した。これを見た作業者Bは慌ててマンホール下部に降り排水口を確保するとともに、作業者Aの救助を開始したが自分もその後倒れた。その直後、応援に駆けつけた他の業者が近くに準備されていた送風機を用いてマンホール内に送風を開始したところ、Bは自力で起き上がり垂直はしごを途中まで登ったところを引き上げられ救助された。なお、作業者Aはその後駆けつけた消防署のレスキュー隊に引き上げられ病院に搬送された。A、B両者共に医師から硫化水素中毒と診断され、ともに休業期間は15日であった。 なお、災害発生当日、作業開始前にマンホール内の硫化水素および酸素濃度の測定は行われていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |||||||
1 | 作業中に作業場の酸素濃度・有毒ガスについての測定を行っていなかったこと
災害発生数日前、発注者の検査があった際に作業場の環境測定を行っていたこと、災害発生直前に水糸の撤収作業等が無事に行われたこと等の理由から作業中には環境測定を行わなかった。 |
||||||
2 | 酸欠の危険がある作業場において換気せず作業を行ったこと
災害発生当日マンホール上部に送風機を設置したが、止水プラグ取り外し作業中に送風機を使用せず作業場所の換気が行われなかった。 |
||||||
3 | 救助者が空気呼吸器等、適切な保護具を使用せず救助活動を行ったこと
救助者は空気呼吸器等、適切な保護具を着用していなかった。またそれらの準備もされていなかった。 |
||||||
4 | 第2種酸素欠乏危険作業に係る作業主任者の職務が遂行されていなかったこと
この災害においては関係者のなかに、第2種酸素欠乏危険作業主任者免許を所有していた者はいたが、当日の作業に関しては
等の職務を励行していなかった。 |
||||||
5 | 連絡体制に不備があったこと
この災害においては事前の安全対策、準備、検討等が不十分であったが、特に関係者の事前の打ち合わせおよびコミュニケーションが不足していた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 酸素欠乏等危険場所における作業を開始する前には、硫化水素等の有害ガスの発散源となる有害物の存在状況を把握すること。 |
2 | 今回のような酸素欠乏危険場所においては、第2種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業を開始する直前に作業場所の酸素濃度および硫化水素等を測定すること。また、その結果を基に作業場所の有害ガスの濃度、分布状況等を把握すること。 |
3 | 作業を行う場所の空気中の酸素濃度を18%以上に、または硫化水素濃度を10ppm以下に保つように送風機等を使用して換気し、その効果を随時測定によって確認すること。 |
4 | 酸素欠乏危険場所および硫化水素ガスが存在しているおそれのある場所における救助活動のときは空気呼吸器等を装着すること。なお、フィルター式の呼吸用保護具は酸素欠乏雰囲気下では使用しないこと。 |
5 | 作業者および関係者の酸素欠乏症、硫化水素中毒等に関する知識の不足、硫化水素等の有害性に関する誤認を防ぐため、これらの者に対する酸素欠乏症等防止規則に基づく特別教育を徹底すること。特に酸素欠乏症または硫化水素中毒等の事故に際し救助作業に関する保護具の使用方法、救急蘇生の方法や手順について併せて十分な教育を行うこと。 |
6 | 第2種酸素欠乏危険作業主任者は作業に従事する労働者が酸素欠乏の空気および硫化水素を吸入しないように作業の方法を決定し、現場において作業者を直接指揮すること。 |