飲料製造工程のタンク内で攪拌機の交換作業中、作業者が酸素欠乏により被災
業種 | 飲料(酒類を除く)製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 保護帽を備え付けていない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100807
発生状況
この災害は、飲料製造工程の飲料攪拌用タンク内で攪拌機を交換しようとした作業者が、換気が不十分であったため被災したものである。
災害発生当日、被災者は、製造ライン責任者の指示により飲料攪拌用タンク内の攪拌機の羽根を取り外す作業を開始した。このタンク内の空気は飲料の酸化を防ぐために通常は窒素で置換されており、作業直前まで窒素がタンク内に充満していた。 被災者は最初にタンク内の飲料が全て充填工程に送液され、空になったことを確認したあと、タンク内部に入る準備として、タンク上部のマンホール、下部ドレン管、サンプリングコック等を開放し、タンクの内壁面をタンク外部のマンホールからホースによって水洗浄した。通常、洗浄の際に用いられている換気装置は作業の時間短縮のため、使用せず、酸素濃度の測定も行わなかった。 その後、被災者はタンク内部に降りたが、タンク底部に降り立った直後に気分が悪くなり、すぐに脱出を試みたが、意識がなくなりその場に昏倒した。タンク外でこれを見た別の作業者が、救助を求めるとともに送風機を用いてタンク内部に送風した。被災者は到着した救急隊に救出され病院で低酸素症と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 作業手順書がなく、作業を行うにあたり関係者間の指示、打ち合わせ等が不十分であったこと。
災害の発生した作業は当日になって突然製造ライン責任者から指示を受けた臨時の作業であり、特に作業手順について細かい指示等はなかった。 |
2 | 工程の時間短縮のため、十分な換気を行わなかったこと。
被災者はマンホール等を開放し、外部から水洗浄を行ったことにより十分にタンク内の換気がなされたものと思い、換気装置による換気を行わなかった。 |
3 | 酸素欠乏のおそれがあるのに、酸素濃度の確認等を行わなかったこと。
このタンクは通常は内部を窒素で置換しているので、酸素欠乏のおそれのある場所である。作業を開始するにあたり、タンク内に酸素測定装置があったが酸素濃度を測定せず、安全確認をしなかった。 |
4 | タンク内の作業にあたって酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場での作業指揮を行わせなかったこと。
タンク内は通常、窒素で置換されており、タンク内の作業では酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場において作業の指揮を行わせる必要があった。しかし災害が発生した工程には酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者はいなかった。 |
5 | 酸素欠乏作業を行う作業者に特別な教育を行っていなかったこと。
災害の発生した事業所では作業者に対する特別な教育は行われておらず、また事業者も酸素欠乏危険作業に対する認識はなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | タンク内等、酸素欠乏危険場所で作業を行う場合には、酸素欠乏作業主任者技能講習修了者の中から酸素欠乏危険作業主任者を選任し、現場での作業の指揮を行わせること。 |
2 | タンク内等、酸素欠乏危険場所で作業を行う場合には、作業に従事する作業者が被災しないように、作業手順書を作成し、その内容を作業者に対し周知徹底すること。 |
3 | タンク内等、酸素欠乏の危険がある場合には、作業前に送風機等で十分にタンク内の換気を行うとともに、作業中も送風機等で継続的に外気を導入すること。 |
4 | タンク内等、酸素欠乏のおそれのある場所で作業を行う場合には、作業を開始する前にタンク内の酸素濃度の測定を実施し、安全を確認すること。 |
5 | タンク内等、酸素欠乏危険場所で作業を行う作業者には事前に酸素欠乏危険作業の危険性等に関する特別教育を実施し、関連する作業手順書についても併せて周知徹底すること。 |
6 | 酸素欠乏危険作業に作業者を従事させるときは、監視者を配置し、常時、作業の状況を監視して、異常の早期把握に努めるとともに、異常時の救急体制を確立しておくこと。 |