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労働災害事例

雑排水処理施設の汚泥貯留槽の清掃作業中、滞留した硫化水素を吸入

雑排水処理施設の汚泥貯留槽の清掃作業中、滞留した硫化水素を吸入
業種 その他の清掃・と畜業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) その他保護具を指定していない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100804

発生状況

 この災害は、地下3階にある雑排水処理施設の汚泥貯留槽を清掃する作業中、硫化水素を吸入したものである。
 この汚泥貯留槽の汚泥の搬出および清掃を請け負った会社は、作業員5名をこの作業に従事させていた。
 災害が発生した日、まず、汚泥貯留槽内の汚泥をバキュームカーに吸い上げた。次いで、槽内に溜まっている汚水を2時間ほど排水し、汚水が30cmぐらいになったとき、作業員Aが、槽内に入り壁面に付着した汚泥をデッキブラシでこすり落としホースで散水していたが、15分ほどで息苦しくなったので槽外に出た。
 次に、作業員Bが槽内に入り同様の作業を行っていたところへ、作業員Aが再度槽内に入り、汚泥をこすり落としている作業員Bの背後からホースで散水していた。そして、5分ほど経過したとき、作業員Bが急に息苦しくなったと言って槽外に出ようとしてタラップに足をかけたが意識を失って倒れた。作業員Aも息苦しくなったが自力で槽外に出た。槽外にいた作業員Cが、ポータブルファンを持って槽内に入り、倒れていた作業員Bを槽外に救出した。作業員A、Bは救急車で病院に搬送され、硫化水素中毒と診断され、入院治療を受けた。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  厨房などから排出された残滓(ざんさ)に含まれていた有機硫黄化合物が、汚泥貯留槽内に汚泥化されて貯留されていた間に、腐敗が進み、分解されて硫化水素が発生して汚水および汚泥内に閉じこめられていたこと。
2  汚泥貯留槽の清掃のため、汚泥をかき混ぜたことにより、汚水および汚泥内に閉じこめられていた硫化水素が汚泥貯留槽内に拡散したこと。
3  硫化水素の発生するおそれのある槽内での作業を行うに際して、空気呼吸器等を着用していなかったこと。
4  酸素欠乏および硫化水素中毒のおそれのある槽内での作業を開始する前に、酸素濃度および硫化水素濃度を測定しなかったこと。
5  酸素欠乏等危険場所での作業を行うに際して、酸素欠乏危険作業主任者の資格を有する者がいなかったため、作業主任者を選任することなく作業が進められていたこと。
6  硫化水素が拡散している場所での作業を行う作業員に対して、その健康障害を防止するための労働衛生教育が行われていなかったこと。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  汚泥槽内の酸素の濃度を18%以上に、かつ、硫化水素の濃度を10ppm以下に保つことのできる換気装置を備え付けること。
2  その日の作業を開始する前に、汚泥槽内の酸素および硫化水素の濃度を測定し、その結果に基づき換気、空気用呼吸器の使用など必要な措置を講じること。
3  空気呼吸器等は、使用開始の都度損傷の有無などについて点検し、必要な補修を行ったものを使用すること。
4  非常の場合に労働者を避難させ、または救出するため必要な用具を備え付けること。
5  異常を早期に把握するために監視人を配置すること。
6  酸素欠乏および硫化水素中毒の危険がある場所での作業を行うときは、酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業を直接指揮させること。
7  硫化水素が発生する汚泥槽内での作業に従事する作業員に対して、酸素欠乏症および硫化水素中毒の防止に関し必要な事項について特別教育を実施すること。