杭打機の作業台上でスクリュウを誘導中、主フックが落下
業種 | 港湾海岸工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 港湾海岸工事 | ||||
災害の種類 | クレーン等で運搬中のものが飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100788
発生状況
この災害は、杭打機(アースオーガー)の作業台上でスクリュウを誘導していたときに、浮きクレーンの主フックが落下して発生したものである。 この工事は、ふ頭の護岸に沿って、幅10m×長さ200mの桟橋を設置する工事であった。桟橋は上部工と下部工に分かれており、下部工から先に行われ、下部工は桟橋の基礎杭を打ち込む作業であった。 災害発生当日、杭打機を乗せた台船と浮きクレーンが岸壁の係留場に係留されていたので、午前10時頃から作業打合せが行われ、詳しい作業手順を確認した後、午前11時に作業が開始された。 まず、浮きクレーンの主フックでケーシングをつり上げ、杭打機の近くに垂直に立てた。一方、クレーンの補フックでスクリュウを吊り上げ、ケーシングの上端まで移動した。 被災者は、杭打機の作業台に乗り、つり上げられ、振れていたスクリュウをケーシングの穴に誘導していたとき、突然、主フックが下降して被災者に落下し、その反動で作業台から転落したが、安全帯を使用していたので空中にぶら下がる状態となった。 現場にいた同僚が救出し、救急車で病院に収容したが、死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ケーシングをつっていた浮きクレーンの主フックがスクリュウに引っかかり、一旦持ち上げられてしまった後、スクリュウをケーシングの穴に誘導しているときに、その引っかかりが突然はずれ、被災者に落下したこと。 |
2 | 浮きクレーンの主フックにケーシングをつったまま、補フックにもスクリュウをつり上げるという2つの危険な玉掛け作業を同時に行ったこと。 |
3 | 浮きクレーンの主フックの玉掛けの状態を事前に十分確認することなく、また、主フックとスクリュウとの接触の有無など観察することなく、スクリュウをケーシングに誘導することのみに気をとられていたこと。 |
4 | この一連の作業について、作業指揮や監視を行う者がおらず、被災者が玉掛けの合図者となって誘導を単独で行ったこと。 |
5 | 作業開始前に一応の作業手順の打合せを行ったとはいえ、これからも繰り返し行われる玉掛けや誘導の作業時の危険性についてのシュミレーションや安全作業方法の確認が不十分であったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 浮きクレーンの主フックによりケーシングのつり上げ作業と補フックによるスクリュウのつり上げ作業を同時に行わない作業方法、作業手順を採用すること。
なお、主フックとスクリュウの接触、脱落等の危険性の有無について検討し、安全な作業方法、作業手順などを定めた作業計画を作成すること。 |
2 | この作業計画に基づいて、毎日の作業開始前の安全ミーティングにおいて、必ず危険のポイントと安全作業のポイントを関係作業員全員にKY活動等により確認させること。 |
3 | スクリュウをケーシングに誘導する場合には、作業開始前に必ず主フックの状況、特にスクリュウとの接触、脱落等が発生しうるかどうかを再度確認するとともに、作業全体を指揮する作業指揮者を配置し、その者の作業指揮の下に玉掛けの合図を行い、適切に誘導などを行うこと。 |
4 | ケーシングの組立作業の手順についても、あらためて作業のプロセスにおける危険度評価を行い、その結果に基づいて、作業者全員に対する安全教育を行うこと。 |