アースドリルによる杭孔掘削作業中、旋回したアースドリルとクローラの間に作業者がはさまれ死亡
業種 | 建築工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 基礎工事用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | くい打機、くい抜機、ボーリングマシン等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業箇所の間隔空間の不足 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 合図、確認なしに車を動かす |
No.100782
発生状況
この災害は、マンション新築工事現場において、アースドリルを使用する現場打ち基礎杭工事の杭孔掘削において、ドリルバケットに堆積した残土を排土する作業中に発生したものである。 現場打ち基礎杭の施工はアースドリルに取り付けられたドリルバケットにより杭孔を掘削した後、鉄筋かごの建て込みを行ない、生コンを注入する手順で作業が行われる。 杭孔の掘削において、掘削された土はドリルバケット内に堆積するので、杭孔からドリルバケットを引き上げ、アースドリルの上部旋回体を旋回し、手元作業者が鋼棒の道具(長さ約2m)を使ってドリルバケットの底盤を開いて外部に排出する。 災害発生当日、午後の一回目の杭孔を掘削した土の排出作業に備えて、手元作業者Aはアースドリルの右クローラ内側の水平部分に置いてあった鋼棒を取りにクローラの間に立ち入った。この時、アースドリルの運転者Bはそれに気づかずに上部旋回体を旋回させたので、Aは右クローラと上部旋回体の間にはさまれた。 午前中に排出した土を移動させるためのドラグ・ショベルを運転していた作業者Cが上部旋回体を旋回させたとき、これを見てアースドリルの運転者に合図し旋回を止めさせ、直ちに救出作業を行ったが、Aは死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 機械の旋回範囲内に立ち入ったこと。
ドリルバケットから掘削した土を排出する作業において、作業者がアースドリルの旋回範囲内に立ち入った。 |
2 | 誘導者が配置されていなかったこと。
安全を確認しながらアースドリル及び手元作業者の動きを誘導する誘導者が定められていなかった。また作業を監視する者もいなかった。 |
3 | 関係者の安全意識が希薄であったこと。
これまでの作業においても、手元作業者が旋回範囲内に立ち入ることが度々あったが、誰もそのことを注意しなかった。また、アースドリルの運転者は周囲の安全確認を十分に行わなかった。 |
4 | 作業手順の安全評価が不十分であったこと。
作業に必要な道具の置き場を旋回範囲内のトラックフレームに定め、手元作業者は旋回範囲内に立ち入らざるを得ない作業手順になっていた。 |
5 | 元請の下請を含む統括安全管理体制が確立していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 機械稼働中における機械の旋回範囲内への立入を禁止すること。
立ち入り禁止の柵、ロープ等の設置の他、監視人を配置する等の措置を講じる必要がある。 |
2 | 誘導者を配置し、その者の誘導に従って作業すること。
機械及び作業者の動きを誘導する誘導者を配置し合図方法を定めるとともに、誘導者は現場不在とならないように複数の者を選任、指名する必要がある。 |
3 | 関係者に対して安全衛生教育を実施すること。
危険要因が確認された時点で直ちにその要因が排除できるように、実態に即した朝礼、KY等の安全衛生教育を実施する必要がある。 |
4 | 適切な作業手順を定めること。
作業に必要な道具を機械の旋回範囲に保管し、作業者が旋回範囲内に立ち入らざるを得ない作業手順は着工以前の計画段階から排除する。 |
5 | 元請の下請を含む統括安全管理体制を確立し、連絡調整、現場の巡視、安全教育等安全管理を徹底すること。 |