ドライクリーニング作業中、テトラクロルエチレンを吸入
業種 | クリーニング業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100776
発生状況
この災害は、クリーニング工場においてドライクリーニング作業中にテトラクロルエチレンを吸入して中毒に罹ったものである。 ドライクリーニングに使用していたのは全自動ドライクリーナーであり、このドライクリーナーは洗濯物の含有油脂を主に洗浄脱脂することを目的としてテトラクロルエチレンを溶剤として使用していたものである。テトラクロルエチレンは、蒸気を用いて蒸発させ、冷却水で液化して繰り返し使用できるようになっている。 災害が発生した日、被災者は、クリーニング工場に設置されている全自動ドライクリーナーを起動し、洗浄処理槽に洗濯物である背広類を入れた。そして、ワイシャツなどの染み抜き作業を行っていたが、全自動クリーナーが乾燥工程に進んだとき、被災者はテトラクロルエチレンの臭気を感じ、乾燥温度が通常の60℃より高くなっていると思い、全自動クリーナーのストレーナーが詰まったものと判断した。そこで、被災者は、水バルブを閉止し、水ストレーナーを解放してストレーナーの掃除を行うこととした。 被災者が水ストレーナーを解放した瞬間、噴出したテトラクロルエチレンを含有する蒸気を吸入し急性中毒に罹ったものである。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 洗濯物の脱脂洗浄用に第2種有機溶剤であるテトラクロルエチレンを使用していたこと。 |
2 | 全自動ドライクリーナーの冷却コンデンサーまたは冷却ラジエタ内の冷却水が流れる銅パイプが腐食して発生した穴からテトラクロルエチレンが冷却水に溶け込み、冷却水が沸騰していたものと推定されること。 |
3 | 運転状態にあった全自動ドライクリーナー内を循環するテトラクロルエチレンは加熱および加圧の状態にあり、その状態で水ストレーナーを開けたためテトラクロルエチレンが溶け込んで沸騰していた冷却水が噴出したこと。 |
4 | マニュアルが作成されていなかったため、作業員の判断により異常時の処理が行われていたこと。 |
5 | メーカーが作成した取扱説明書に基づく点検整備が十分に行われていなかったこと。 |
6 | テトラクロルエチレンの臭気を感じて異常時の処理作業を行う際に、適切な保護具を使用していなかったこと。 |
7 | 有機溶剤の有害性に関する知識が乏しかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | メーカーが作成した取扱説明書に基づき、装置の点検整備を定期的に行うこと。なお、技術的に専門性を必要とする点検整備項目については、メーカーなど専門業者に依頼すること。 |
2 | 全自動ドライクリーナーの水ストレーナーなどの掃除、定期的に行う点検整備、異常時の処理などの作業については、装置の電源を開路し、冷却水および蒸気の元バルブの閉止、装置内部が常温常圧になったことの確認、保護具の着用などについて定めた作業マニュアルを作成すること。 |
3 | テトラクロルエチレンの装置への補給、または漏洩などの異常時の処理の作業を行うときには、有機溶剤用防毒マスクなど適切な保護具を着用させること。なお、保護具は必要数を備え付け、清潔が保持できる場所に保管すること。 |
4 | 有機溶剤作業主任者を選任して、その者に、作業マニュアルの励行状況、保護具の使用状況などを監視させること。 |