ゴムシートの製作過程において加熱加工する作業中、化学性肺炎にかかる
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100772
発生状況
この災害は、ティーショット用のゴムシートを成形し、仕上げる作業中に発生したものである。 この作業は、粒子状のゴムとメチレンビスフェニルイソシアネート(MDI)を含有する接着剤をミキサーに入れて攪拌し、型枠(縦横1.3m、深さ8.5cm)の中に敷き詰めて、電気アイロンにより加熱成型し、表面を均らして平らに仕上げるものである。 ゴムシートを製作する作業は、幅が12m、奥行きが50m、天井高さが4mの建屋内で行われていた。 災害が発生した日の午前8時30分から、被災者は、同僚と二人でゴムシートを製作するため、ミキサーで攪拌された粒子状のゴムと接着剤を型枠内に敷き詰めて、電気アイロンにより表面を均らす作業を行っていた。 作業開始後2時間が経過した頃、被災者は、急に咳が止まらなくなったため作業を中断し、しばらく休憩をしていたが回復しなかった。そのため、午後からの作業を止めて自宅に帰った。 自宅に帰った被災者は、午後6時頃になって、急に呼吸が苦しくなったので自宅近くの病院で診察を受けたところ、総合病院に回されて精密検査を受けた。その結果、化学性肺炎と診断されて入院加療したものである。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 人間に対して明らかに感作性があると考えられる物質とされているメチレンビスフェニルイソシアネートを含有している接着剤を使用していたこと。 |
2 | 電気アイロンにより加熱成形加工する際に発生したメチレンビスフェニルイソシアネートの蒸気が、被災者の呼吸域に拡散していたため、その蒸気を被災者が吸入したこと。 |
3 | 有害物質を含有する接着剤を加熱加工するに際して、局所排気装置を設けるなど、発生する有害な蒸気の吸入を防止するための設備を設けていなかったこと。 |
4 | 有害物質を含有するゴム製品を加熱加工する作業に従事する作業者に、防毒マスクなどの保護具を使用させていなかったこと。 |
5 | 接着剤メーカーから交付されたMSDS(化学物質等安全データシート)にある安全衛生上の注意事項を遵守していなかったこと。 |
6 | 作業者が接着剤に含有する有害物質の有害性に関する認識がなかったこと。 |
7 | 有害物質を含有する原材料を使用するとき、その有害性および健康障害の防止のための対策を講じるための労働衛生管理体制が不十分であったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 有害物質を含有する原材料を取り扱う作業は、囲い式のフードを備えた局所排気装置を設置するなど発生する有害物質の蒸気の吸入・ばく露を防止するための設備を設けること。 |
2 | メーカーから交付されたMSDSを確認し、安全衛生に関する注意事項に基づき、作業方法、作業手順、保護具の使用などを記載した作業マニュアルを作成すること。 |
3 | 有害物質を取り扱う作業を行うときは、作業指揮者を指名し、その者に作業マニュアルの遵守、保護具の使用状況などについて監視させること。 |
4 | 有害物質を含有する原材料を取り扱う作業者に対して、有害物質の有害性およびその物質が及ぼす健康障害の防止対策などについて労働衛生教育を実施すること。 |
5 | 安全衛生推進者を選任し、その者に、労働衛生関係設備、保護具等の点検、作業環境の点検および作業方法の点検、安全衛生教育に関することを行わせるなど管理体制を整備すること。 |