たばこ刻の分離室内で清掃作業中、ニコチン中毒
業種 | たばこ製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100770
発生状況
この災害は、たばこ製造工場において分離機などの水洗作業中にニコチン中毒に罹ったものである。 災害が発生したのは、前工程において高温乾燥されてエアーにより搬送された「たばこ刻」を分離する分離器および付随する振動コンベアなどの機械設備が設置されている分離室であった。 被災者は、この工場の構内下請の作業者として、構内のメンテナンス作業に従事していた。 分離室内は、たばこ刻が振動コンベア上を通過する際にたばこ細粉が堆積することから定期的にこれを除去するための清掃作業が行われていた。 清掃作業は、温水を散水した後、金属製のへらを用いて付着、堆積した細粉を取り除き、水洗する方法で行われていた。 災害が発生した日、分離室内の換気装置を含むすべての機械設備の稼働を停止し、午前11時から3名の作業者が簡易防じんマスクを着用して清掃作業を開始し、午前中に作業を終えた。昼の休憩後、清掃作業終了後の片付けの作業を3名が1時間ほど行い、それぞれほかの作業に就いていた。 午後2時半頃、清掃作業に従事した3名のうち2名が、気分が悪くなったと訴えたので直ちに病院で診察を受けたところ、急性ニコチン中毒と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 分離室内に設置された機械設備に堆積したニコチンを含有するたばこ刻の細粉を温水により洗浄した際に発生した蒸気、ヒューム、ミストなどが分離室内に浮遊していたこと。 災害発生後、災害時の状況を再現し、分離機、振動コンベア周囲のニコチン濃度を測定したところ、300〜1700μg/m3 であった。なお、通常作業時のニコチン濃度は、250〜700μg/m3 であった。 |
2 | 機械設備の稼働を全停止したことにより換気装置が停止されて分離室内の換気が行われていなかったため、ニコチンの蒸気などが室内に滞留していたこと。 |
3 | 着用していた保護具が簡易防じんマスクであったため、ニコチンのガス、蒸気を吸入したこと。 |
4 | 適切な保護具の選択および使用についての指導が作業者に対して行われていなかったこと。 |
5 | 清掃作業について、作業中に換気装置の稼働、保護具の着用などを含めた作業マニュアルが作成されていなかったこと。 |
6 | 換気装置の稼働、保護具の管理など労働衛生管理体制が機能していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 分離室内の機械設備は、排気ダクトを備えた密閉構造とするなどニコチン濃度が500μg/m3 を超えないように設備改善すること。 |
2 | 分離室内の清掃作業について、換気装置の確実な運転、有機ガス用防毒マスク、保護手袋などの保護具の適切な着用などを記載した作業マニュアルを作成すること。 |
3 | 有機ガス用防毒マスクおよび保護手袋など必要な保護具を備え付け、清潔を保持できる場所に保管すること。 |
4 | 保護具の知識経験を有する者を保護具管理者として選任し、その者に、保護具の管理およびその選択、使用についての指導を作業員に対して行わせること。 |
5 | 清掃作業の際、作業指揮者に対して、換気装置の稼働状況、保護具の使用状況などについて監視させること。 |
6 | 衛生管理者および職制の役割を明確化した労働衛生管理体制を整備し、作業マニュアルの作成状況、保護具の備え付け状況などを管理する必要があること。 |
7 | 作業員に対して、作業マニュアルに基づいた労働衛生教育を実施すること。 |