印刷物をラミネート加工する作業中、急性中毒
業種 | その他の印刷・製本業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100769
発生状況
この災害は、ラミネート機の前に立ってラミネート加工された印刷物を受け取り運搬する作業中、急性有機溶剤中毒に罹ったものである。 ラミネート機は、雑誌の表紙、化粧品の箱、ビデオケースのカバーなどの印刷物にポリプロピレンフィルムを貼り付けるものであった。 ラミネート機は、イソブチルアルコールやメタノールなどを含有する接着剤を塗布したポリプロピレンフィルムを加熱して印刷物にラミネートするものであった。 災害発生当日、被災者は、ラミネート機の作業責任者とともに、ラミネート作業を行うように工場責任者から指示され、午前8時30分からラミネート作業に就いた。 被災者の作業は、ラミネート機から作業責任者が取り出したラミネート加工された印刷物を受け取るなどの作業責任者を補助する作業であった。作業開始後、2時間ほど経過した頃、被災者は頭がボーとしたような感じがし、気分が悪くなったが、そのまま作業を継続していた。 昼食後、午後1時から作業を再開したが、午後4時頃になって、吐き気がし、手足が震えてきたので、直ちに病院に収容して診察を受けたところ、急性有機溶剤中毒と診断され、入院加療したものである。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ラミネート加工に使用していた接着剤に、酢酸エチルやメタノールなどの第2種有機溶剤が含有されていたこと。 |
2 | ラミネート機の接着剤の受皿上部に設けられていた局所排気装置が十分に機能していなかったこと、また、接着剤が塗布されたポリプロピレンフィルムの乾燥部の密閉が十分でなかったため、接着剤に含有していた有機溶剤の蒸気が拡散し、ラミネート機の接着剤の受皿の近くで作業していた被災者が拡散した有機溶剤蒸気にばく露したものと考えられること。 |
3 | 有害物を取り扱う作業について、作業方法、作業手順、保護具の使用などについての作業マニュアルが作成されていなかったこと。 |
4 | 被災者の身体の異常に対して、保護具を着用させるなど有機溶剤作業主任者による異常時の措置が適切に行われなかったこと。 |
5 | 作業者が、有機溶剤の有害性に関する知識が十分でなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ラミネート機の接着剤の受皿部の局所排気装置は、受皿部がフードに囲われる囲い式にするなど発生する有機溶剤の蒸気が拡散しないような設備に改善すること。 |
2 | ラミネート機の乾燥部は、単に密閉化するだけではなく、排気ダクトを設けるなど乾燥の際に発生する有機溶剤の蒸気が作業環境に拡散することのないように設備的な改善を行うこと。 |
3 | 有機溶剤作業主任者は、作業者が有機溶剤により汚染され、またはこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること。(有機則第19条の2第1号) |
4 | 局所排気装置は、一月ごとに作業主任者による点検、1年以内毎に定期自主検査を確実に行い、異常を認めたときには直ちに補修を行うこと。(有機則第19条の2第2号、第20条第2項) |
5 | 作業中に、設備の異常または作業者の身体の異常などを認めたときには、直ちに、設備の点検、保護具の使用など有機溶剤作業主任者に適切な措置を講じさせること。 |
6 | 有機溶剤を取り扱う作業に従事する者に対して、その有害性および防止対策についての労働衛生教育を実施すること。(安衛法第59条) |