試掘井戸の噴出試験作業中、排気口から硫化水素ガスが噴出して中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100768
発生状況
この災害は、試掘井戸の噴出試験を行う作業中、井戸の排出口から噴出した硫化水素ガスを吸入して中毒にかかったものである。 試掘井戸を地下約2000メートルまで掘削し、井戸坑口に口元弁を取り付け、配管を接続して井戸から排出される蒸気および熱水を処理するための噴出試験設備を据え付けた。 災害が発生した日、試掘井戸の噴出試験に関係する8社の作業員、合計25名により、試掘井戸の噴出試験を行う作業を始めた。午前10時に、元請の社員からの噴出試験開始の指示を受けた下請けの作業責任者は、配下の作業員4名に対して試掘井戸の口元弁を開くように指示した。指示を受けた作業員は、口元弁の開閉用ハンドルを操作して口元弁を開く操作を始めた。 口元弁が開き始めたとき、「ゴー」という音とともに排気口から霧状のガスが噴出し、井戸坑口付近で異臭が感じられたので、近くにいた元請の社員の「全員退避」の呼びかけにより、坑口付近にいた作業員全員が退避した。しかし、退避の途中で、7名の作業員が噴出したガスに含まれた硫化水素ガスを吸入して中毒にかかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 試掘井戸の掘削作業中に噴出していた硫化水素ガスが、掘削終了後、口元弁を取り付けたことにより井戸内の上部に滞留していたこと。 |
2 | 硫化水素ガスは熱水や蒸気とともに噴出すると想定していたにもかかわらず、口元弁を開くときに噴出する蒸気および熱水により、配管や架台が振動することを防ぐために調整弁をあらかじめ少し開いておいたこと。そのため、口元弁を開いた際、井戸内の上部に滞留していた硫化水素ガスが一気に排気口から噴出して、作業場所に拡散した。 |
3 | 排気口の高さが低かったため大気より比重の大きい硫化水素ガスが大気へ放出される際に、作業場所付近に滞留しやすい状態にあったこと。 |
4 | 退避する際に、微風に乗って硫化水素ガスが拡散する方向にほとんどの作業員が退避していたこと。 |
5 | 作業員の硫化水素ガスによる有害性に対する認識が欠如しており、資源調査を行うに際して、保護具の使用、退避経路の設定などの事前の検討が不十分であったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 排気口は、作業場内に排気ガスが拡散しないように十分な高さに設置すること。 |
2 | 試掘井戸にはガス抜き専用の配管を設け、噴出試験を開始する前に、井戸の上部に滞留したガスを排出すること。 |
3 | 硫化水素ガスが噴出することを想定し、硫化水素中毒を防止するため、保護具の使用、風向きを考慮した安全に退避することのできる経路の設定などを含めた作業方法および手順をあらかじめ作成すること。 |
4 | 噴出する硫化水素ガスは、吸収液によってガスまたは蒸気を吸収処理する方式、酸化剤または還元剤を用いて反応分離する方式などの処理を行ってから大気に放出すること。 |
5 | 作業者に対して、硫化水素ガスが人体に及ぼす影響とその防止対策について労働衛生教育を実施すること。 |
6 | 硫化水素ガスの有害性およびその対策について十分な知識、経験のある者を作業指揮者に指名し、直接作業を指揮させ、作業状況、保護具の使用状況などについて監視させること。 |