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労働災害事例

銅メッキ槽の入れ替え工事でシアン化合物による皮膚障害を受ける

銅メッキ槽の入れ替え工事でシアン化合物による皮膚障害を受ける
業種 機械器具設置工事業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 機械器具設置工事
災害の種類 その他の取扱運搬等
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:2人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100764

発生状況

 この災害は、銅メッキを行っている工場の銅メッキ槽の入れ替え工事において槽内に付着したシアン化合物等の除去作業中に発生したものである。
 工場の夏休み中に上下に構成されているメッキ槽3組の入れ替え工事を行なった。新しいメッキ槽を製作した会社が元方事業者となって被災者らが所属する1次下請事業場および2次下請事業場が共同で作業を行った。
 災害発生当日、午前8時から約20分間、発注者である工場の設備管理担当者、元方事業者から工場長と機械組立工、1次下請から代表者と取締役および機械設置工2名(Aほか)、2次下請から機械設置工2名(B、C)が集合して朝礼が行われ、発注者および元方事業者から工事の内容を説明し、シアン化合物を使用しているため、皮膚がピリピリしたら洗うこと、全身が痒くなったなら風呂を用意しているので洗うこと等の指示があった。
 朝礼後、各作業者は、発注者が用意した長袖、長ズボン、化学防護服、ゴム手袋、保護眼鏡、防じんマスク、保護クリームおよび各自が持参した長靴を着用して午前8時30分頃から作業を開始した。
 作業は、メッキ槽(3組)および6槽のロール等に付着しているシアン化合物(シアンを含有した炭酸ソーダ)の木製へらによる除去と槽の底に溜まっている廃液の洗い流しで、被災者4名は3つ目の槽で作業を行っていた。
 午前10時の休憩のときに、取締役および作業者A,B,Cの4人が腕、大腿部に痒み、痛みを感じたので水道水で洗い、保護クリームを塗って30分ほど休憩して作業を再開した。その後、昼の休憩、午後の休憩を取って午後5時に作業を終了した。
 作業の終了後、2次下請の社長から被災者Bに電話があり、被災者Bが状況を話したところ、「作業を終了して直ぐ戻ってくるように」と指示があったので、翌日に会社に戻り、そのまま病院で診察を受けたところシアン化合物による皮膚障害と診断された。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 防護服が破れる等によりシアン化合物の粉が身体に付着したこと
 後日、被災者の防護服等を調査したところ、防護服が破れていたものがあった。午前の休憩時に腕、大腿部に痒み、痛みを感じたため防護服を脱いだときに、作業服にシアン化合物の粉じんが付着し、さらに、それが身体に付着したものと推定される。
2 作業者がシアン化合物の有害性を知らなかったこと
 この作業に従事した1次および2次下請の取締役、作業者は、同種作業に従事するのは初めてであり、作業開始前に施設の管理者側からシアン化合物の取扱い、身体にピリピリ等の異常を感じたときの処置について説明を受けたときにもその有害性を十分に認識することができなかった。
3 作業指揮等の安全衛生管理を実施していなかったこと
 シアン化合物の除去作業の直接指揮は元方事業者に所属する機械組立工が行ったが、同人も同種作業は初めてであり、特定化学物質の有害性についての知識は全くなく、また、元方事業者、1次および2次事業者とも作業現場における安全衛生管理を実施していなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 取扱い物質の有害性を周知徹底すること
 メッキに使用するシアン化カリウム、シアン化ナトリウム又はこれらを含有するものは、特定化学物質第2類に属する有害物でシアン化水素と同様に猛毒のものであり、粉じんを吸入し、又は皮膚粘膜に附着すると中毒又は死亡に至る有害なものである。
 したがって、これらに接触するおそれのある作業に従事する者に対しては、あらかじめその危険有害性について周知徹底することが必要である。
2 作業責任者を選任し作業を直接指揮させること
 特定化学物質等を製造し、取扱い、もしくは貯蔵する設備又は特定化学物質等を発生させるものを入れたタンク等で特定化学物質等が滞留するおそれのあるものの改造、修理、清掃等で、これらの設備を分解する作業又は設備の内部に立入る作業を行う場合は一定の知識を有する者を作業指揮者として指名するとともに、次の事項を実施する。(特化則第22条関連)
(1) 作業の方法を決定し、労働者に徹底すること
(2) 換気装置により内部を十分に換気すること
(3) 非常の場合に直ちに退避させる設備を備えること
(4) 労働者に不浸透性の保護衣、保護手袋、保護長靴、呼吸用保護具等必要な保護具を使用させること
3 安全衛生管理を実施すること
 数次の下請を使用した重層構造で作業を行う場合、それぞれの事業者は労働者の安全と健康を確保する責務はそれぞれの事業者にあることを認識し、安全衛生担当者の選任と職務の明確化、必要な安全衛生教育の実施等を行うほか、受注した仕事の危険有害性に関する情報の収集、その対策の検討、作業手順の決定と周知徹底、必要な保護具の準備等を確実に実施する。
 また、危険有害な仕事を発注する者は、その情報を受注者に的確に伝達するとともに、受注者が策定した作業計画について必要な指導、援助を行う。