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労働災害事例

発電用ボイラーのブロー用配管の取替工事中に一酸化炭素中毒

発電用ボイラーのブロー用配管の取替工事中に一酸化炭素中毒
業種 建築設備工事業
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 その他の建設工事
災害の種類 中毒
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:2人
不休者数:1人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理) 防護・安全装置を無効にする

No.100759

発生状況

 この災害は、製鉄所の発電用ボイラーのブロー用配管取替え作業中に発生したものである。
 災害発生当日は、この製鉄所おいて毎月1回設定している高炉の保全日で、第2高炉を休風し発電用ボイラーの配管等の補修を行うことになった。
 作業は、元方事業者、一次下請、二次下請(作業員合計60名)で行うことになり、午前8時30分に発注者である製鉄所の責任者に着工の許可を得て、ガス本管の空気置換を開始した。この置換は12時頃までかかるので、その間に一次下請の社長と2名の作業員は二次下請の工作作業場で交換するブロー配管部の製作を行った。
 午後1時に、再び製鉄所の許可を得て作業の打合せを行い、午後2時から作業を開始した。まず一次下請けの3名でドレン抜き用の異径継手(径の異なる管を接続する管)を取り外し、続いてU字管内部の一酸化炭素濃度を測定し、50ppm以下であることを確認した。
 その後、ブロー配管の一部の交換まで終了したが、製鉄所の立会い者からU字管の管底に残っていたダストの除去を指示され、二次下請の作業員2名が配管内に入って管底のダストを掻き集める作業を行っているときに、1名が一酸化炭素を吸入して倒れたので同僚が管を叩いて立会い者に知らせた。
 この連絡を受けた立会い者は、管内に入り中にいた同僚とともに被災者を救出したが、この2名も一酸化炭素中毒となった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 U字管内に一酸化炭素ガスが流入してきたこと
 この作業においては、作業着手前に時間をかけて配管内を空気で置換し、一酸化炭酸ガス濃度の測定を行うとともに、新しい管の溶接前に酸素濃度の測定(U字管の底部から約2mの位置)を行って21%以上であることを確認していた。
 しかし、事故後に調査したところ、配管と接続されているガスホルダー(内容積40,000m3 )との間の仕切り板溶接部の一部が腐食していたため、そこから一酸化炭素ガス(圧力800mmAq)が作業箇所にまで漏洩(推定濃度約600ppm)したものと判断された。
2 呼吸用保護具を使用させていなかったこと
 この作業における一酸化炭素の有害性については、一次下請の社長もかなり認識していた。一酸化炭素の濃度測定等も行っていたが、漏洩による危険有害性にまでは考えが及ばなかったため、適切な呼吸用保護具を使用させなかった。
3 安全衛生管理が十分に行われていなかったこと
 元方事業者が一次下請および二次下請の労働者の安全と健康を確保するために必要な指導等行っていなかったこと、有害なガスにさらされる危険のある作業について作業指揮者を選任し労働者の安全衛生確保のために必要な職務を励行させなかったこと等の安全衛生管理が十分ではなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業開始前に有害ガスの流入のおそれ等について広く検討すること
 作業開始前の計画の作成段階において、配管を通じて有害ガスが作業箇所に漏洩する可能性、換気の要領とその効果および作業環境の測定ポイント等について十分に検討して、作業方法を決定し、関係作業者に徹底する。(特化則第22条第1項第7号関係)
2 高炉ガスの遮断装置について検討すること
 作業箇所に接続している全ての配管から特定化学物質等が流入しないように設置したバルブ、コック等を二重にするとともに、その機能を確認できる装置等について検討する。(特化則第22条第1項第3号関係)
3 適切な呼吸用保護具を使用させること
 特定化学物質等が存在していないことを測定等により確認した場合においても、配管を通じて有害物が流入、漏洩することがあるので、労働者に適切な呼吸用保護具等を使用させる。(特化則第22条第1項第10号関係)
4 安全衛生管理を徹底すること
 特定化学物質等により労働者が健康障害を受けるおそれがある作業については、一定の知識を有する者を作業指揮者として指名し、作業を直接指揮させること(特化則第22条第1項第2号関係)、元方事業者は関係請負人およびその労働者が安衛法令等に違反しないよう必要な指導等を行うことなど安全衛生管理を十分に行う。(安衛法第29条関連)