ホテル内において清掃作業中、洗剤の混合による塩素ガス中毒
業種 | ビルメンテナンス業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100757
発生状況
この災害は、ホテル内において清掃作業中、洗剤を混合する際に塩素ガス中毒にかかったものである。 被災者が所属する会社は、ホテルから清掃作業を請け負い、このホテルにチーフ以下13名の清掃員を常駐させていた。 災害が発生した日、被災者らは午前9時にホテルに出勤し、午前中に1階を、午後に2階を清掃する予定で清掃作業を開始した。 被災者Aは、午前中に1階の清掃作業行い、午後には2階の清掃作業を他の清掃員とともに行っていた。午後の清掃作業に入ってから被災者Aは、洗剤を補給するためトイレ内で、廊下に置かれていたタイルワックスをポリバケツに注ぎ入れたが量が少なかったので、タイルワックスの近くに置かれていた次亜塩素酸ソーダを追加したところ、ポリバケツから白煙が発生し、その白煙を吸入してしまい、気分が悪くなったので従業員用の控室で横になっていた。 その様子を見たチーフは、事情を聞き、本社へ災害発生の報告を行った。その後、チーフは、災害が発生したトイレに赴き、白煙の発生したポリバケツに水を入れてトイレ内に数回に渡って流していたところ、気分が悪くなり被災者Aと共に病院に搬送された。いずれも塩素ガス中毒と診断され、Aは死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 洗剤として補給しようとしたタイルワックスは硫酸を10%含有しており、これに次亜塩素酸ソーダを加えたため、化学反応を起こし、塩素ガスが発生したものであること。 |
2 | タイルワックスおよび次亜塩素酸ソーダの容器に、含有成分、取扱上の注意事項が適切に表示されていなかったため、通常の清掃作業には使用しないタイルワックスや次亜塩素酸ソーダを通常使用する洗剤と思い込んで使用したこと。 |
3 | 清掃に使用する洗剤類の保管場所が定められていなかったため、タイルワックスおよび次亜塩素酸ソーダが、通常の洗剤と紛らわしい状態で廊下に置かれていたこと。 |
4 | 安全衛生管理体制が整備されていなかったため、清掃員に対する雇い入れ時などにおける安全衛生教育が実施されていなかったこと。 |
5 | 清掃員が、有害物を含有するタイルワックスなど洗剤の有害性に関する知識を有していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | タイルワックス、次亜塩素酸ソーダなど有害性のある洗剤などは、保管場所を定めて保管し、その容器には成分および取扱に関する注意事項を表示すること。 |
2 | 清掃に使用する洗剤の有害性に関する知識経験を有する者の中から洗剤を管理する者を選任し、その者に、洗剤の適正な使用、取扱方法などについて必要な指導を行わせるとともに、洗剤の適正な保守管理を行わせること。 |
3 | 清掃作業について洗剤の適正な選択、その取扱などについての作業手順を作成し、清掃員に対して周知徹底すること。 |
4 | 次亜塩素酸ソーダを混合する際に塩素ガスが発生するおそれがある場合には、作業場所の換気方法および作業方法の事前検討、作業者に保護具を着用させるなど適切な管理を行うこと。 |
5 | 清掃作業員に対して、洗剤の有害性、人体への健康影響、およびその防止対策などについて労働衛生教育を実施すること。 |