鋼製の貯水タンク内で下地塗料の塗布作業中、有機溶剤中毒
業種 | その他の建設業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100756
発生状況
この災害は、鋼製の貯水タンク内の防水工事において、下地塗料を塗布する作業中に発生したものである。 貯水タンクは、幅が2.5 m、奥行きが3.8 m,深さが2.4 mのものであり、天井部に縦および横が50cmの開口部が設けられていた。 災害が発生した日、元請の現場代理人と下請の作業者2名により打合せを行った。作業は、外部に2人が待機し、1人がタンク内で塗布作業を交代で行うこととし、作業中は、タンクの側面にあるバルブを開放し、タンク天井部の開口部からブロワーで送気し、有機ガス用吸収缶を装着した保護マスクを着用することとした。 まず、下請の作業者Aがタンク内に入り塗布作業を行い、塗料の補給のためタンクの外に出て、換気用のブロワーのスイッチを切った。そして、ブロワーによる送気が停止されたまま作業者Aがタンク内に入り、後を追うようにして作業者Bもタンク内に入った。その後、タンクから離れていた元請の現場代理人がタンク上に上がったところ2人の姿が見えないので、タンク内をのぞいたところタンクの底部に倒れている2人を見いだした。直ちに2人を救出したが、有機溶剤中毒により作業者Bは死亡し、作業者Aは入院治療により治癒した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 使用していた塗料に、有機溶剤であるトルエンが45%、酢酸エチルが15%、キシレンが8%含まれていたこと。 |
2 | タンク内を換気するためのブロワーの運転を停止していたため、塗料に含まれていた有機溶剤から発生した蒸気が、密閉されたタンク内に滞留していたこと。 |
3 | タンク外に、タンク内を監視する者がいない状態でタンク内での作業を行っていたため、救出が遅れ、症状が重篤化したこと。 |
4 | 死亡した作業者Bが使用していた保護マスクが粉じん用防じんマスクであったこと。また作業者Aが使用していた防毒マスクの吸収缶が使用限度を超えて破過していたものと考えられること。 |
5 | 防毒マスクの適切な選択および使用方法についての知識が乏しかったため、防じんマスクの使用が見過ごされてしまったこと。 |
6 | 元請の下請に対する有害物を取り扱う作業における防護対策についての技術的な指導が不足していたこと。 |
7 | 有機溶剤を含む塗装作業の有害性に関する認識が、作業者に欠如していたこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | タンク内での有機溶剤を含有する塗料を塗布する作業にあたっては、タンク内の気中濃度が健康障害を及ぼす濃度以下になるように換気する能力を有する換気設備を使用すること。 |
2 | 防毒マスクについては、その取扱説明書および破過曲線図などに基づいて、作業場所における有害物質の気中濃度、温度、湿度に対して余裕のある使用限度時間をあらかじめ設定し、その設定時間を限度に使用すること。 |
3 | タンク内で有機溶剤を含有する塗料の塗布作業を行う際には、常にタンク外に監視人を配置し、タンク内作業を監視させ、異常事態の発生に備える必要があること。 |
4 | 作業を開始する前に、あらかじめ、保護具の使用、換気の方法、作業の方法および手順などについての作業手順書を作成すること。 |
5 | 元請は、下請に対して有機溶剤中毒防止のための労働衛生教育、換気の方法、保護具の適切な選択と使用方法などについて技術的な指導援助を行うこと。 |