交流アーク溶接機で亜鉛メッキされたアングル材の溶接作業中、亜鉛中毒に罹る
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100751
発生状況
この災害は、製缶工場において交流アーク溶接機を用いて亜鉛メッキされたアングル材の溶接作業中に発生したものである。製缶工場は、長手方向30m、幅が12m、天井高さ2.5mのものであり、天井には5基の換気扇が取り付けられていた。
溶接作業は、受注先から支給された長さ5.5mのL型アングル(縦横10cm、厚さ7mm、亜鉛メッキの厚さ0.2mm)の亜鉛メッキされた鋼材を切断および溶接し、1m×1mおよび2m×2mの枠を製作するものである。
災害が発生した日の2日前から、被災者は枠の製作作業を始め、先ず、アングルカッターを用いて、1m枠用のもの、2m枠用のものをそれぞれの長さに128本を切断加工した。
災害が発生した前日からの両日、被災者は、朝8時から夕方6時まで9時間にわたって、交流アーク溶接機を用いてアングル材を仮付け溶接する作業に従事していた。
仮付けの溶接作業は、しゃがみ込むような姿勢で、定盤上に枠状に組んで置かれたアングル材の各角を3点ずつ点溶接するものであった。
災害が発生した日、被災者は、作業を終えて帰宅した後、身体の異常を訴え病院に収容され診察を受けたところ、亜鉛中毒と診断された。
原因
この災害は、製缶工場において交流アーク溶接機を用いて亜鉛メッキされたアングル材の溶接作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 加工材のアングル材にメッキされていた亜鉛が、溶接時に、アークにより熱せられて亜鉛が蒸発し、亜鉛ヒュームが発生していたこと。 |
2 | アーク溶接作業を行う際に、天井に取り付けられている換気扇を稼働するなど換気が十分に行われていなかったこと。 |
3 | アーク溶接作業に従事させる作業員に対して、適切な呼吸用保護具を着用させていなかったこと。 |
4 | 保護具着用管理が適切に行われていなかったため、保護具を必要とする作業に従事する者に対する保護具着用の周知徹底が不十分であったこと。 |
5 | 溶接作業時に発生するヒュームの危険・有害性に関する知識が不十分であったため、溶接ヒュームに対する危険・有害性に対する認識が希薄であったこと。 |
6 | 換気扇の稼働、保護具の着用など溶接作業時の安全衛生を確保するための作業手順が作成されていなかったため、作業員の判断に委ねられて作業が行われていたこと。 |
対策
この災害は、亜鉛メッキされたアングル材の溶接作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | アーク溶接の作業を行う屋内作業場については、発生する溶接粉じんの気中濃度を希釈させるため全体換気装置による換気を行うこと。 なお、作業員の呼吸域での粉じんを除去するため、溶接作業箇所にフードを設けて換気する局所的な換気方法が効果的であること。 |
2 | 溶接作業など粉じんの発生を伴う作業を行う屋内作業場の床、設備および休憩設備が設けられている場所の床については、1月以内ごとに1回、定期に、真空掃除機を用いて、又は水洗するなど粉じんの飛散しない方法によって清掃を行うこと。 |
3 | 局所排気装置を設けることなく屋内作業場において、アーク溶接する作業を行うときは、作業員に有効な呼吸用保護具を使用させること。 |
4 | 溶接作業時に、換気の方法、呼吸用保護具の着用など作業の安全衛生を確保するための作業手順を作成し、周知徹底すること。 |
5 | 作業を管理する立場の者は、換気設備の点検、作業手順に示す作業方法の遵守状況、換気の稼働状況、保護具の点検および着用状況などについて監視すること。 |