排液の入ったコンテナ内に散水する作業中、混入していた硫化水素ガスを吸入
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100749
発生状況
この災害は、製造工程で発生した硫化水素を吸収するタンク内の内容物を処理する作業中に発生したものである。硫化水素吸収タンク内には、製造工程で発生した硫化水素およびトルエンが配管で送り込まれる。タンク内に送り込まれた硫化水素は、タンク内に入っている苛性ソーダ溶液に吸着され、水硫化ソーダとなり、比重の軽いトルエンの下に滞留する。
このタンク内のトルエンおよび水硫化ソーダは、それぞれ専用のコンテナに抜き取られる。
次いで、トルエンを抜き取ったコンテナからは、混入した水硫化ソーダをコンテナ底部のノズルから抜き取りトルエンを回収する。このトルエンの回収を行う前に、コンテナ内壁に付着した水流化ソーダを洗い落とすため、フレキシブルダクトの先端に取り付けられた局所排気用のフードを蓋にかぶせて、フード開口部から散水する作業が行われる。(図)
災害が発生した日、被災者は、コンテナ内面に付着している水硫化ソーダを洗い落とすため、脚立に乗ってコンテナの蓋を開け、この蓋に局所排気用のフードをかぶせ、コンテナ内に散水していたところ、「臭い」と言いながら脚立を降りてきて数歩歩いた後、崩れるようにして倒れた。
原因
この災害は、硫化水素吸収タンク内の内容物を処理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 硫化水素吸収タンクからコンテナに抜き取った排液に、苛性ソーダに吸着しなかった硫化水素ガスが混入されていたものと考えられること。 |
2 | 局所排気用フードが取り付けられたフレキシブルダクトはメインダクトに接続されていたが、このメインダクトに設けられたダンパーが十分に開いていなかったため、フード開口面での制御風速が十分に得られず、コンテナ内の硫化水素ガスがフード開口面から漏出し吸入したものと考えられること。 |
3 | コンテ内への散水作業に係る作業手順が作成されていなかったため、局所排気用のフードの取扱い、保護具の着用などが徹底されていなかったこと。 |
4 | 硫化水素吸収タンク内に、硫化水素ガスが残留することに関する知識が十分でなかったこと。 |
5 | 作業員に対する有害物に関する教育の実施、作業手順の作成などが十分に行われるための安全衛生管理が十分に機能していなかったこと。 |
対策
この災害は、硫化水素吸収タンクから抜き取ったトルエンの入ったコンテナ内に散水する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | コンテナ内のトルエンを処理する作業は、作業に従事する者がトルエンおよび硫化水素の吸入などによる障害を防止するため、局所排気装置の運転および局所排気用フードの取り扱い方法などの要領、使用する保護具の種類の指定および着用方法、異常時の措置などを記載した作業手順書を作成すること。 | ||
2 | 有機溶剤作業主任者および特定化学物質等作業主任者の資格を有する者を選任して、その者に次の事項を行わせること。 | ||
(1) | 作業手順書に基づく作業指揮 | ||
(2) | 局所排気装置について定期的な点検 | ||
(3) | 保護具の点検および使用状況の監視 | ||
3 | 作業員に対して、硫化水素ガスおよびトルエンの危険・有害性およびその防護対策などについて教育を実施すること。 | ||
4 | 安全衛生推進者を選任し、その者に、作業手順作成状況、安全装置、労働衛生関係設備、保護具などの点検および使用状況の確認、安全衛生教育の実施に関することなどを管理させること。 |