外部に設けられた排気口から排出されたパン焼釜の燃焼ガスが、建家天井裏を経由して室内に拡散されて一酸化炭素中毒に罹る
業種 | パン、菓子製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100748
発生状況
この災害は、パンおよび和洋菓子を製造する作業中に発生したものである。パンを製造するパン焼釜は、バーナーによるプロパンガスを燃料としたものである。この釜には、排気用ダクトが取り付けられており、このダクトは釜本体から天井裏を経由し、建家壁に開けられた開口部に取り付けられた排気口から燃焼ガスが外部に放出されていた。
なお、壁に設けられた開口部とダクトとの間には4cmの隙間が生じていた。
この事業場は、パンおよび和洋菓子の製造室、店舗、ストックヤードなどの室があり、各部屋にはエアコン設備が天井に取り付けられていた。
災害が発生した日、パン製造チーフは午前2時に出勤し、パン焼釜に火を入れ、パンの原料出し、材料の計量、パン生地の分割・成型の作業を始めた。午前5時に、パン製造員2名が出勤し、パン焼き作業が始められた。午前6時頃にパン製造チーフが頭痛と嘔吐の症状を訴え帰宅した。その後、9時から9時30分にかけて、パン製造室で作業中の製造員が次々と頭痛および嘔吐の症状を訴え、さらに10時頃に他の部署に出勤した従業員も次々と頭痛を訴え、18名が救急車により病院へ収容され、一酸化炭素中毒と診断された。
原因
この災害は、パン焼釜でパンを製造する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | パン焼釜の燃焼の際に、空気量の不足などによる不完全燃焼により一酸化炭素ガスが発生していたこと。 |
2 | パン焼釜の燃焼室への外気の逆流防止のための改造工事の際に、完工時の確認がなされなかったため、ダクトと壁の開口部との間に生じた隙間が見過ごされ、この隙間から一酸化炭素ガスを含む燃焼ガスが天井裏に逆流していたこと。 |
3 | ダクトと壁開口部との隙間から天井裏へ逆流した燃焼ガスが天井裏に充満し、充満した燃焼ガスは各部屋に取り付けられたエアコンの外周から室内に漏出し、稼働したエアコンのファンにより室内に拡散したこと。 |
4 | パン焼釜が設置されている部屋に、一酸化炭素ガスを検知して警報する装置がなかったため、一酸化炭素ガスが室内に拡散していることに気付かなかったこと。 |
5 | 製造担当者が、プロパンガスの不完全燃焼による一酸化炭素ガスの発生メカニズム、および一酸化炭素ガスの有害性についての知識がなかったこと。 |
対策
この災害は、パン焼釜の燃焼ガスに含まれた一酸化炭素ガスにより発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 燃焼ガスの逆流や不完全燃焼で発生した一酸化炭素ガスの濃度が規定値以上になると警報を発する不完全燃焼警報器を取り付けること。 |
2 | 排気用ダクトの排気口を建家の側壁から出す場合は、排気口の位置を軒先より高い位置に設けること。なお、ダクトと壁に設けた開口部との隙間は詰め物により封鎖すること。 |
3 | 各種設備の設置・改造等を発注する場合は、工事内容について工事業者との十分な打ち合わせを行い、完工時に、仕様書どおりの工事が行われていることを確認すること。 |
4 | 燃料ガスの漏出、不完全燃焼による一酸化炭素ガスの発生などの危険有害性およびその防止対策、異常時における措置などについて教育を実施すること。なお、異常時に対処するため、定期的に避難訓練を実施することも必要であること。 |
5 | 安全衛生推進者を選任し、その者に、機械設備等の安全点検および使用状況の安全確認、作業環境の点検、異常な事態における応急措置などについてのマニュアルの整備などの管理を行わせること。 |