地下室内を高圧水で洗浄中、洗浄機の排気ガスで一酸化炭素中毒
業種 | ビルメンテナンス業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の一般動力機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100742
発生状況
この災害は、飲食店の地下室を高圧水で水洗する作業中に発生したものである。被災者らはビル管理会社に所属しているが、災害発生当日は飲食店が入居しているビル地下室の天井、壁、床を課長と作業員の2名が高圧水で洗浄することになり、午前9時頃作業現場に到着した。
地下室の広さは間口5.35m、奥行き14.5m、高さ5.2mで、室内には何も置かれていなかったので、到着後2名は直ちにガソリンエンジンで駆動する高圧洗浄機(圧力15MPa、給水量14リットル/minのもので水道水を一旦ポリバケツに溜め、それを吸い上げて高圧水を供給する機械)、大型のポリバケツ、モップ等を地下室に持ち込んだ。
午前9時30分から洗浄作業を開始し、課長が高圧洗浄機から伸びるホースの先の噴射口を持って奥の壁、天井の順に洗浄を行い、作業員はモップで床に溜まった水の水切り作業を行った。
この間、ガソリンエンジンから排出されるガスの匂いが室内に充満したこともあって午前10時20分頃に10分程度の休憩をとったが、匂いもなくなったので作業を再開し、作業もほぼ終了する頃になって2名とも急に頭がガンガンとしてきて、吐き気をもよおし、目もチカチカしてきたがそのまま作業を続け、午前11時頃に作業は終了した。
その後、屋外に出て休憩していたが、体調が回復しないので、課長が車を運転して現場から5kmほど離れたところにある病院にいき診察を受けたところ、一酸化炭素中毒、低酸素脳症の診断を受け2名とも休業1日となった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 換気が不十分な場所でガソリンエンジン駆動の高圧洗浄機を使用したこと 被災者らが作業を行っていた場所は、出入口しかない地下室で換気装置も設置されておらず、このような密閉状態の場所でガソリンエンジン駆動の高圧洗浄機を使用したため、エンジンの排気ガスが部屋に充満し一酸化炭素中毒となった。(30分間エンジンを駆動した場合の一酸化炭素は3,000ppm近くになると想定される。) |
2 | ガスの匂いが充満してきたのに作業を中止しなかったこと 被災者らは、作業を開始してから間もなくしてガスの匂いが充満してきたので、一旦休憩したが、匂いが消えたことだけで安全と判断して作業を継続した。 なお、一酸化炭素中毒等に関する知識がなかったことが、このような判断の誤りにつながったものと想定される。 |
3 | 作業計画の段階で危険有害性の検討を行わなかったこと 被災者らの所属する会社は、主に建物の外壁の高圧水洗浄を行っており、地下室の洗浄の作業は年に数回程度であったため、換気の悪い地下室等の仕事を受注したときに健康障害防止等について検討し、安全な作業計画を作成しなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 換気の不十分な場所ではガソリンエンジン駆動の機械を使用しないこと 地下室のような密閉状態にあるところでは、ガソリンエンジン駆動の機械を使用せず、電動の機械を使用する。やむを得ず、ガソリンエンジン駆動の機械を使用する場合には、十分な能力のある換気装置を設置し使用する。(安衛則第578条関連) また、地下室などに入る前には、作業環境測定を必ず行って酸素濃度、一酸化炭素濃度等を確認する。 |
2 | 安全衛生教育を実施すること 酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等の危険がある場所で作業を行う者に対しては、あらかじめこれらの危険有害性とその対策について特別教育を実施する。(安衛法第59条・安衛則第36条) また、作業環境測定器具、送気マスク等の使用方法について教育訓練する。 |
3 | 安全衛生管理を徹底すること 規模の小さいところでも安全衛生管理を担当する者を指名し、安全衛生教育の実施、作業環境測定器具・保護具の整備、安全衛生管理計画・作業手順の作成などを行わせる。 また、仕事を受注した場合には、作業に伴う危険有害性の有無を必ず検討した上で作業者の配置等を行う。 |