河川堤防で草刈り作業中に熱中症となる
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 高熱物等による | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100741
発生状況
この災害は、河川堤防上で草刈りの作業中に発生したものである。堤防の草刈り作業は、3つの河川(総延長約5km、総面積約58,000m2)を約3か月かけて実施するもので、Y社は2次下請として仕事を請負っていた。
災害発生当日、Y社の被災者Aは、午前7時頃に同僚Bとともに現場に到着し、同じ2次下請Z社の作業員2名と一緒に1次下請X社の責任者から作業内容の説明を5分ほど受けた後、堤防上で前日までに刈り取られた草を竹ホウキでかき集める作業を行った。
昼食後、Aは、橋付近の堤防上で草刈り機(長さ180cm、質量6.5kg、鋸径22cm)を使用して草刈り作業を開始、途中、午後2時より15分間他の作業者らと高架橋下で休憩し、その後引き続いて橋付近の堤防上で草刈り作業を行った。
午後3時頃、Bが休憩を知らせにAの作業場所に行くと、Aは草刈り機を抱えたまま座り込むような格好で倒れていた。
そこで、抱き起こしたが、朦朧とした状態であったため、1次下請の現場責任者を呼んで救急車を手配した。
その間、Aを休憩場所の高架橋下の堤防上へ運んで寝かせるとともに、氷で冷やしたタオルでAの頭を冷やした。その後、病院に移送したが、熱中症のため同日中に死亡した。
なお、Aは前夜に社長宅を訪れて仕事と住居を求めたので当日から採用した者であった。
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。1 | 炎天下での作業における健康対策が不十分であったこと 当日、午後3時頃の気候は、気温が30℃を越え、湿度も50%を超える炎天下での屋外作業となっていた。 事業場としては、1時間の休憩、10リットルの氷入りのお茶2本、1.8リットル入りのスポーツドリンク3本を用意していたが、作業者個々の体調に合わせた管理等の面では対策が不十分であったと推定される。 |
2 | 被災者の健康状態の確認が不十分であったこと 被災者は前夜、社長宅を訪れて仕事と住居、食事を求めているが、これから推定すると無職で住居がなく、食事もほとんどとっていなかったため、かなり衰弱していて、炎天下での作業に耐えられる健康状態ではなかったと推定される。 |
3 | 安全衛生管理体制がなかったこと この事業場は、小規模の事業であって、多くの場合下請として作業員を派遣するような体制で仕事を行っており、作業に関する指揮監督も上位の下請業者に任せきりで、労働者に関する安全衛生管理をほとんど実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 熱中症対策を十分に行うこと 夏期の高温環境下で筋肉労働に従事する者は、体温調節が乱されて熱中症(熱射病)にかかる危険性が高いので、できるだけ涼しい休憩場所の確保、適当な間隔の休憩の付与、水分・塩分の補給等を行うことが重要である。 また、日頃から労働日数や労働時間の削減、食欲増進、水分・塩分を食品の形で補給する食生活の改善、十分な睡眠時間の確保等に努めることが望ましい。 |
2 | 作業者の健康状態を把握すること 熱中症等のおそれのある夏期の炎天下の作業などに従事させる者に対しては、雇い入れ時および定期健康診断による健康状態の把握を行うほか、その日の作業開始前に体調の確認等を必ず実施する。 |
3 | 安全衛生管理を実施すること 事業者は、労働者の安全衛生を確保するために、担当者の選任、定期健康診断等の健康管理の実施、熱中症等に関する安全衛生教育の実施、作業場所の巡視と適切な指示などを実施する。 |