猛暑の炎天下の作業場所で足場解体部材搬出等作業中、熱中症によって死亡
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | その他 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | 心不全等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 温湿度の不適当 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不安全な行動のないもの |
No.100740
発生状況
この災害は、炎天下での屋外作業のために発生した熱中症によるものである。災害発生当日、被災者Aは、午前9時頃から12時頃まで所属する会社の炎天下の資材置場において、足場の部材等の整理整頓を行い、休憩室で1時間昼休みした。
午後からは、別の場所にある新築工事現場にトラックで移動し、同僚作業者B、Cおよび被災者Aの3名で、午後2時半頃から足場の解体作業および解体した足場資材をトラックに積み込む搬出作業を行なった。
現場は、当日は朝から暑く、最高気温が37.4度に達する猛暑であった。このときの被災者Aの服装は、ポロシャツ、ジーパンを着用し、薄手の作業用ベストをつけていた。また、被災者Aが作業していた作業場所は、屋根等の直射日光を遮る設備はなかった。
30分ほど作業したとき、同僚Bは、被災者Aが非常に気分が悪そうに見えたので、1時間程度日陰の場所で休ませた。
午後4時頃から被災者Aは、作業を再開したが、足元がふらついて災害をおこす危険があったので、元請X社の現場責任者が作業を停止させ、日陰の場所で再び休ませた。5時頃から被災者は、吐き気を催し、症状がひどくなったので、救急車で入院させ、診断の結果、熱中症であると診断され、その後多臓器不全のため死亡した。
原因
その災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 災害発生当日の最高気温が摂氏37.4度(16時01分計測)という暑い日に屋根のない炎天下で資材置場での足場の部材等の整理整頓、トラックへの足場解体部材の積み込み作業等を行わせていたこと。 |
2 | 大量の発汗による塩分の喪失に対して、これを補給しなかったため、熱痙攣がおこり、被災者の体温調節や循環機能に障害が生じたこと。 |
3 | 現場の安全管理担当者が塩分および水分を補給ができるよう準備をするなどの夏期の熱中症状対策を怠ったこと。 |
4 | 被災者に吐き気等の異常が見られたとき熱中症であることが、本人および関係者に認識されておらず、単なる体調不良と見なしていて、緊急入院等の早期の救急措置が遅れたこと。 |
5 | 現場の安全担当者は、作業開始前の作業打ち合わせ、KY活動、注意事項の伝達を行なっておらず、被災者への健康状態、作業服装にも注意が払われていなかったこと。 |
6 | 現場の安全管理者に熱中症に対する認識が低かったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 | 日中の気温上昇が予測される時は、直射日光を遮り、風通しのよい休憩所を確保すること。 | ||
2 | 気温の上昇が著しい場合には休憩時間の間隔を十分にとり、休ませること。 | ||
3 | 炎天下での作業はできるだけ長時間の作業を避け、また風通しのよい服装をさせること。 | ||
4 | 休憩場所には水分、塩分補給のためにスポーツドリンク、身体を適度に冷やすことのできる氷水、顔や体の汗を流す水洗場備え付けること。 | ||
5 | 統括安全衛生責任者は、高温となることが予測される日は、あらかじめ関係請負人との連絡網を通じて、工事関係者に周知させ、事前に熱中症の予防指示し、措置を講ずること。 | ||
6 | 労働者が熱中症の症状を呈したときは、軽症のときは下記の手当てを行わせ、症状が回復しないときは重症と見なし、直ちに病院に搬送し、診察、治療を受けさせること。 | ||
(1) | 涼しいところで安静に寝かせる。 | ||
(2) | 水やスポーツドリンクなどを取らせる。 | ||
(3) | 裸体に近い状態にし、冷風を当てる等により体温の低下を図る。 |