汚水タンクの内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に窒息死
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 分類不能 | |||||
災害の種類(事故の型) | 分類不能 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 分類不能 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100736
発生状況
この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に発生したものである。災害発生当日の午後、タンク内の酸素および硫化水素濃度の測定を行い、酸素濃度が21%、硫化水素が検出されないことを確認し、タンク内の点検および清掃の作業を始めた。
先ず、タンク内の残水の排出を行い、次いで、底部に残った汚水を除去するために汚水吸収タオルを投入した。この汚水吸収タオルを回収するため、下請作業員が順次縄ばしごによりタンク内に入り、吊り降ろされたバケツに汚水吸収タオルを回収する作業を行ったが、3人目に入った作業員Gが3回ほど作業を繰り返した後、タンク底部で作業中に足元がふらつき体調が悪そうだったので、この様子をタンクの外で見ていた下請けの職長は作業員Gを引き上げることにした。
そこで、元請の現場責任者と作業員Hが汚水タンク内に入り、作業員Gの身体にロープを巻き付けて現場責任者と作業員Hが作業員Gを肩に乗せ、押し上げながら縄ばしごを登っていたところ、作業員Hが縄ばしご上1mのところからタンクの底へ墜落した。作業員Gを引き上げた後、現場責任者がタンク内に入り、タンク底部に仰向けに倒れている作業員Hの様子を見たところ、半眼で意識を失っており、直ちに病院へ収容したが、窒息による死亡と診断された。
原因
この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 死亡は窒息によるものと判定されたが、その原因は次のように推定されること。 | ||
(1) | 救出作業のとき、防じんマスクのずれなどにより鼻、口が塞がれて窒息状態を引き起こしたこと。 | ||
(2) | 墜落して後頭部を打撲し無意識になったとき、舌の落ち込み等により気道閉塞を起したこと。 | ||
(3) | パニック状態により心肺機能が低下したこと。 | ||
2 | 縄ばしごを使用しての救助作業を行ったため、救出者を抱きかかえながらの不自然な作業姿勢を強いられることとなり、着用していたマスクのずれまたは墜落するなどの間接的要因を引き起こしたこと。 | ||
3 | タンク内での異常時における救出作業についてのマニュアル類が具体的に定められていなかったため、2次災害を防止する手段を検討することなく救出作業が行われたこと。 | ||
4 | 安全衛生管理に関する機能が十分に機能していなかったため、現場での作業がそれぞれの監督者の判断に委ねられて行われており、作業の安全衛生に関する事前の検討が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | タンク内での作業を行う必要性を少なくするための設備的な改善を検討すること。 | ||
2 | タンク内への昇降設備は、鋼製の固定できるものとすること。また、ライフラインを設けるなど昇降中の墜落防止対策を講じること。 | ||
3 | タンク内での作業行うときは、監視人を配置し、異常を早期に把握するために必要な措置を講ずること。 | ||
4 | 救助作業について、空気呼吸器等、はしご、繊維ロープなど備え付ける必要のある用具・器具類、救助方法などについてマニュアル化すること。 | ||
5 | 現場監督者には、作業方法の決定、作業員の指揮、酸素などの濃度測定、用具・器具または設備の点検、保護具の使用状況の監視、異常時の適切な措置を確実に行わせること。 | ||
6 | 教育・訓練の実施 | ||
(1) | 防じんマスクのフィットネステストなど使用する保護具の着用時における留意事項などについて実技を取り入れて教育を実施すること。 | ||
(2) | 異常事態が発生した場合を想定した避難および救助に関する実地訓練を定期的に実施すること。 |