点検修理のため揚土船のボイドスペース内に入り、酸素欠乏症に罹る
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100735
発生状況
この災害は、点検整備のために入渠していた揚土船の機関室からの油漏れの確認をするためボイドスペースに入って被災したものである。災害が発生した揚土船は、約1年間休止されていたもので、点検整備を行うためドックに入渠していた。揚土船は、全長が80.0m、幅が20.7m、高さが4.0mであり、船底はボイドスペース、機関室、燃料室、飲料室、資材置き場などの用途に3列に間仕切りされている。
被災者は、船主から機関室に隣接するボイドスペースに機関室からの油漏れがあるので点検修理するように依頼されていた。
災害が発生する前日に、被災者は作業員に対して船主から依頼を受けているボイドスペースの点検を行うため、マンホールの蓋を開けるように指示を行っていた。この指示を受けた作業員は、マンホールの蓋のボルトを外し、蓋を閉めたままの状態にしていた。
災害が発生した日の朝、被災者は、従業員および協力会社の作業員全員による朝礼を行い、朝礼後、被災者は従業員に対して、その日の業務打ち合わせと必要な指示を行った。
その後、機関室に隣接するボイドスペース内に至る昇降用はしごの途中で宙づりになっている被災者が発見された。
原因
この災害は、点検整備のために入渠していた揚土船の機関室からの油漏れの確認をするためボイドスペースに入って酸素欠乏症に罹ったものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | ボイドスペース内が長期間密閉されていたため、その内壁が酸化されて空気中の酸素が消費されたことによりボイドスペース内が酸素欠乏の状態になっていたこと。 |
2 | ボイドスペース内に入る前に、ボイドスペース内の酸素濃度の測定、換気、空気呼吸器などの保護具の使用など酸素欠乏症を防止するための措置を講じなかったこと。 |
3 | 酸素欠乏危険場所であるボイドスペース内での作業を行うに際して単独で入ったため、救出が遅れたこと。 |
4 | 酸素欠乏危険作業主任者の資格を有する者がいなかったなど管理体制に欠陥があったことなどから、酸素欠乏危険場所における作業を適切に行うための作業手順が作成されていなかったこと。 |
5 | 酸素欠乏危険場所での作業に係る特別教育を実施していなかったため、酸素欠乏症に対する危険認識が希薄であったこと。 |
対策
この災害は、揚土船のボイドスペース内に入り酸素欠乏症に罹ったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 密閉状態であったタンク類または通風の不十分な船倉などへ立ち入る場合には、酸素濃度が18%以上になるように換気を十分に行い、測定を行うことにより酸素濃度を確認すること。なお、換気することが著しく困難な場合は空気呼吸器等を使用させること。 | ||
2 | 酸素欠乏危険場所での作業について、酸素欠乏症を防止するための監視人の配置、換気の方法、酸素濃度の測定、空気呼吸器の使用などについて記載された作業手順を作成し、周知すること。 | ||
3 | 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に、作業員が酸素欠乏の空気を吸入しないように次の事項を行わせること。 | ||
(1) | 作業の方法を決定し、作業員を直接指揮すること。 | ||
(2) | 作業開始前、作業員の身体、換気装置などに異常があったときなどに、酸素濃度を測定すること。 | ||
(3) | 測定器具、換気装置、空気呼吸器などを点検すること。 | ||
(4) | 空気呼吸器等の使用状況を監視すること。 | ||
4 | 酸素欠乏危険作業に就かせるときは、特別の教育を実施すること。 |