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労働災害事例

浄化槽の清掃作業中、硫化水素中毒に罹る

浄化槽の清掃作業中、硫化水素中毒に罹る
業種 その他の清掃・と畜業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:2人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 場面行動
発生要因(管理) その他

No.100734

発生状況

 この災害は、紡績工場において工場廃水の処理のために設置された浄化槽の清掃作業中に発生したものである。
 災害が発生した日、清掃業者の係員A、Bの2名は、工場の担当者Cの立ち会いのもとで浄化槽の清掃作業を始めた。
 清掃作業は、先ず、Bが、浄化槽のマンホールの蓋を開けて、バブリングを停止した後、Aがバキュームカーのホースを浄化槽内に差し入れ、Bがバキュームカーのコック操作を行い、浄化槽内の廃水を仮置きのタンク内に移した。
 浄化槽内を空にした後、Aは、木製のはしごを第1槽の槽内に降ろし、浄化槽内に入った。Bは、浄化槽マンホールからAの作業の様子をうかがっていた。
 Aが浄化槽内部に入った直後、Bが浄化槽内に向かって「おーい、おーい」と叫んでいる様子を見た立会人Cは、Aが浄化槽内に墜落したものと思い、工場事務所に走り、救急車の手配を行い、同僚とともに浄化槽に戻ったところ、Bの姿が見えなくなっていた。
 そこで、立会人Cが浄化槽内をのぞいたところ、2名とも浄化槽内で倒れているのを発見した。レスキュー隊により2名とも救出されたが、Aはすでに死亡しており、Bは病院へ収容後死亡した。

原因

 この災害は、工場排水の処理のために設置された浄化槽の清掃作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
 浄化槽からの放流水を循環させるため浄化槽と産業廃棄物最終処分場との間を接続していた配管により、産業廃棄物最終処理場内で硫酸塩還元菌により生成された硫化水素が運ばれて浄化槽内に滞留していたものと考えられること。
2
 硫化水素の発生するおそれのある浄化槽内での作業を開始する前に、酸素および硫化水素濃度の測定を実施していなかったこと。
3
 酸素および硫化水素の測定が行われていなかったため、酸素濃度18%以上、硫化水素濃度10ppm以下に保つように換気が行われていなかったこと。
4
 硫化水素の発生するおそれのある浄化槽内での作業を行うに際して、第二種酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったため、適切な作業指揮が行われていなかったことこと。
5
 退避・救出のためのロープ、空気呼吸器などの用具・器具を備えていなかったため、2次災害を誘発してしまったこと。
6
 酸素欠乏症、硫化水素中毒に関する特別教育が行われていなかったため、その危険性についての知識がなかったこと。

対策

 この災害は、浄化槽の清掃作業で硫化水素中毒に罹ったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
 酸素欠乏危険作業は、第二種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業の方法の決定など適切な作業指揮を行わせること。
2
 作業を行う場所の空気中の酸素濃度を18%以上、かつ、硫化水素濃度を10ppm以下に保つように換気すること。
3
 酸素欠乏危険作業を行うときは、酸素欠乏危険作業に従事する作業者以外の者がその場所に立ち入ることを禁止すること。
4
 酸素欠乏危険作業を行うときは、常時作業の状況を監視し、異常を認めたときは直ちにその旨を酸素欠乏危険作業主任者などに通報させること。
5
 空気呼吸器等、はしご、繊維ロープ等非常の場合に避難、救出に必要な用具を備え付けること。
6
 酸素欠乏危険作業に関する作業手順を作成し、周知徹底すること。
7
 有資格者の確保、特別教育の実施、作業手順などのマニュアル類の整備などが組織的に取り組むことができるように安全衛生管理体制の見直しを行うこと。
8
 酸素欠乏危険作業を行う作業者に対して、特別教育を実施すること。