家庭用プロパンガスの供給切換中に酸素欠乏症
業種 | その他の土木工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100733
発生状況
この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものである。災害発生当日、住宅地で使用されているプロパンガスをボンベ方式から集合方式への切換工事を請け負ったX社では、専務と作業員3名で作業を開始した。
作業の内容は、道路下に埋設されているプロパンガス(1.39Mpa)の本管(内径150mm)から一般家庭への供給管(内径32o)を接続するもので、まず住宅の北側から道路まで(延長11m、幅0.86m、深さ0.3m)のうち、本管に接続している枝管部分を深さ1.7m、幅0.78m、長3.2mを専務Aが小型ドラグ・ショベルを使用して溝を掘削した。
次いで、作業員Bがドラグ・ショベルで掘削した溝に入り、枝管をパイプカッターで切断してプロパンガスが漏れないように防食テープを切れ目に巻きつけ、さらに防食テープを巻いた本管側25pをパイプカッターで切断し、ストッパーを切断した枝管に取り付けようとしたがうまく取り付けることができず、手間取っている間にBが溝内で倒れた。
これを見た作業員Cが溝内に入ってBを救出した後、溝内に入って、ストッパーを調整していたがまもなく倒れたので、Aと作業員DがCを救出するため掘削溝に入ったが、両名とも気を失って倒れた。
近隣の主婦が消防署に通報し、救出されて病院に移送されたが、4名とも酸素欠乏症のため2日から6ヵ月の休業となった。
原因
この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、その災害原因としては、次のようなことが考えられる。
1
|
管理責任者をはじめ、作業者全員に酸素欠乏危険についての知識がなかったこと たとえ明かり掘削した溝で上部が開放していても、狭い場合にはプロパンガスは空気より重いために溝の底部に滞留して、容易に酸欠危険場所になるおそれのあることを知らなかった。 |
|
2
|
本管のガス供給を停止せずに作業を行ったこと この作業は、プロパンガスの本管から家庭への供給管を取り付けるものであったが、ガス本管側の供給を遮断しないまま作業を行い、作業に手間取ったため、プロパンガス供給管埋設用に掘削した溝内にプロパンガス漏洩して充満した。 |
|
3
|
溝内が狭いため取付け作業が円滑にできなかったこと 本管と枝管との接続箇所の掘削範囲が小さかったため、ガス漏れ防止のために取り付けるストッパーを正しく、手早く装着することができなかった。 |
|
4 | 作業手順が定められていなかったこと プロパンガスが供給されている本管と、これと接続している枝管にストッパーを接続する作業の手順が定められていなかったため、短時間でストッパーが取り付けられると考え安易に作業を実施した。 |
対策
この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
|
ガス管の接続作業の手順を定めて作業を行うこと プロパンガス等が供給されたままの本管(または枝管)の一部を切断、開放することは極めて危険であるので、次のような事項を含めた作業手順を定め、関係作業者等に徹底する。 |
|
(1) | ガスを遮断した場合でも本管に残存しているガスが漏洩することによる危害を防止するため、空気呼吸器等を使用すること | |
(2) | ストッパー等を取り付ける場合には、一旦、本管のガス供給を遮断すること | |
(3) | 溝内に有害なガスが滞留しないよう換気すること | |
2
|
安全な作業が行えるように掘削すること 掘削溝内でガス配管工事を行う場合には、溝内作業が安全に、かつ、効率的に実施できるよう十分な広さの溝を掘削する。 |
|
3
|
酸素欠乏危険等について教育を実施すること 掘削溝内においてガス配管工事等に従事する者に対しては、供給されているガスまたは地層による危険有害性、漏洩することによる危害の種類とその防止対策、危害防止のための空気呼吸器の使用方法等について、あらかじめ安全衛生教育を実施する。(安衛法第59条、安衛則第35・36条関連) |