コンクリート打設後2ヶ月経過した地下ピットに型枠解体のため入り酸素欠乏症となる
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 区画、表示の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100732
発生状況
この災害は、大学の研究棟の建設工事中に発生したものである。この工事全体は約2年間の工期で行われるものであったが、約1年が経過した時点でコンクリートが打設されてから約2か月間密閉されていた地下ピット(ケーブルや上下水道の配管等を収容するためのピット)内の型枠の解体作業を行うことになった。
災害発生当日の作業の内容は、幾つかに分割されているピット間に設置されている型枠材に穴を開け人通孔を確保するもので、被災者は同僚と2人で朝から地下ピットに入ってこの作業を開始した。
午後3時頃、被災者は、ピット2とピット3の間にある型枠材を手鋸を使用して切断し、ピット3に入ったところで気を失って倒れた。
その後、被災者は元方事業者の職員等によって換気したのち救出され病院に移送されたが、3日後に酸素欠乏症のため死亡した。
なお、被災者および同僚は形式上は2次下請の労働者であるが、実際には派遣労働者で作業の指揮・監督は元方事業者または1次下請事業者が行っていた。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | ピット内が酸素欠乏危険場所になっていたこと 災害が発生した後に同様の条件で他のピットで酸素濃度を測定したところ、3.5〜3.6%であったことから、ピット3の中は著しい酸素欠乏危険場所になっていたと推定される。 なお、その原因としては、ピット内において好気性の微生物が増殖したことによるものと推定される。 | ||
2 | 作業主任者の未選任、酸素濃度測定の未実施など安全衛生管理を実施していなかったこと この災害の直接的な原因はピット内が酸素欠乏状態となっていたことであるが、間接的な原因としては次のことがあげられる | ||
(1) | 元方事業者は換気の必要性については認識していたが、それ以外の酸欠災害防止対策については特に指示を行っていなかった。 | ||
(2) | 1次下請(被災者の派遣先)の現場責任者も酸素欠乏危険については認識していたが、元方事業者に対して換気以外の酸欠災害防止対策について要請せず、また、換気の実施についても明確な指示を行っていなかった。 | ||
(3) | 酸素欠乏危険作業主任者を選任して、酸素濃度等の測定、作業の監視等を行わせていなかった。 | ||
(4) | 関係労働者に対して酸素欠乏危険およびその防止対策についてあらかじめ教育を実施していなかった。 なお、被災者らは、派遣労働者であったが、危険有害な業務に安易に従事させていたことも原因の一つとしてあげられる。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 作業主任者を選任し、その職務を励行させること 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、次のような職務を励行させる。(酸欠則第11条関連) | ||
(1) | 作業の方法を決定し労働者を指揮すること | ||
(2) | 作業開始前等に酸素濃度を測定すること | ||
(3) | 測定器具・換気装置・空気呼吸器等の点検を行うこと | ||
(4) | 空気呼吸器等の使用状況を監視すること | ||
2 | 特別教育を実施すること 関係作業者に対して酸素欠乏危険に係る特別教育をあらかじめ実施する。(酸欠則第12条関連) なお、酸素欠乏危険場所には、関係者以外の立ち入りを禁止し、その旨を表示する。(酸欠則第9条、安衛則第640条関連) | ||
3 | 換気を十分に行うこと 地下ピット内で作業を行うときには、あらかじめ換気を十分に行う。(酸欠則第5条関連) | ||
4 | 安全衛生管理体制を整備すること 酸素欠乏危険場所等を有する工事現場においては、元方事業者による関係請負人の連絡調整、作業場所の巡視等を行う体制を整備する。(安衛法第30条関連) |