液体窒素が噴出されているコールドボックスの点検口をのぞいたところ酸素欠乏症に罹り、コールドボックス内に転落
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100731
発生状況
この災害は、冷却用コールドボックス内に保冷剤を補充する作業中に発生したものである。コールドボックスは、高さが14.8m、幅が5.0m、奥行きが4.0mの大きさの鋼製の箱状のもので、内部に格納された精留装置を冷却するものである。精留装置が稼働しているときは、コールドボックス内には液体窒素が噴出されて−130℃に保持される。また、冷却効果を高めるために、コールドボックス内は紛状の保冷剤が隙間なく充填されている。
保冷剤は、時間の経過とともに、自然沈下してコールドボックス上部に隙間が生じるため、定期的に保冷剤を補充する必要があった。保冷剤の補充に際しては、通常、精留装置の運転を停止し、液体窒素の噴出を止めてから行われていた。
災害が発生した日、被災者は、酸素欠乏危険作業主任者として、保冷用コールドボックス内にある保冷剤の補充作業を行うため、まだ液体窒素の噴出を止めていないコールドボックスの上部にある点検口(縦0.5m、横0.5m)の蓋を開け、内部をのぞいて点検していたところ、点検口から1.7m下の保冷剤の上に転落し、充満している窒素ガスを吸入して酸素欠乏症により死亡したものである。
原因
この災害は、冷却用コールドボックス内に保冷剤を補充する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | コールドボックス内に転落したのは、コールドボックス内に滞留していた窒素ガスを除去しないで、点検口をのぞいたとき窒素ガスを吸入し、酸素欠乏症に罹かったことにより意識が薄れたことによるものと考えられること。 |
2 | 酸素欠乏危険場所での作業を行う際に、測定することによって酸素濃度を確認しなかったこと。 |
3 | 液体窒素が噴出しているコールドボックス内を点検口からのぞいて点検する作業を行う際に、空気呼吸器などの保護具を使用しなかったこと。 |
4 | コールドボックス内に保冷剤を補充するための作業手順が作成されていなかったこと。 |
5 | 被災者自らが酸素欠乏危険作業主任者であったが、作業主任者としての職務を行っていなかったこと。 |
6 | 酸素欠乏危険場所での作業が、現場作業者の判断により行われていることなど安全管理体制の欠陥があったこと。 |
対策
この災害は、コールドボックス内に保冷剤を補充する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 保冷剤の補充作業を行う際には、コールドボックス内およびその周囲における酸素濃度を測定すること、空気呼吸器等の保護具を使用することなど酸素欠乏症を防止するための作業手順を作成すること。 | ||
2 | コールドボックス内の窒素ガスを排出する装置を設け、ボックス内の酸素濃度が18%を超えないと点検口が開けられないなどのインターロック機構を設ける必要があること。 | ||
3 | 酸素欠乏危険作業主任者に作業主任者に対して能力向上教育を実施し、作業を行う際には次のことを確実に行わせること。 | ||
(1) | 酸素欠乏症を防止するための作業方法の決定、作業の直接指揮 | ||
(2) | 作業開始前、作業者の身体または換気装置などに異常が発生したときなどの酸素濃度の測定 | ||
(3) | 測定器具、換気装置、空気呼吸器などの点検 | ||
(4) | 空気呼吸器等の使用状況の監視 | ||
4 | 安全衛生管理体制を見直し、作業主任者の職務の履行状況、作業手順の遵守状況の管理監督を徹底すること。 |