倉庫内の保管庫内でドライアイスを収納する作業で酸素欠乏症に罹る
業種 | その他の卸売業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100730
発生状況
この災害は、倉庫内に設置されている保管庫内にドライアイスを収納する作業中に発生したものである。災害が発生した事業場は、食品、ドライアイス、生活用品などの卸売りを業としている。
この事業場の倉庫に設置されていたドライアイスを収納する保管庫は、縦1.8m、横1.8m、深さ1.5mの大きさの鋼製の上部が開放された箱状のものであり、上部には木製の7枚の板で蓋がされるものである。
ドライアイスは、クラフト紙で包まれた25cm角の大きさで、20〜25kgの重量のものであった。
災害が発生した日、倉庫内のドライアイス保管庫の脇に横付けしたトラックの荷台からドライアイスを保管庫内に収納する作業を被災者と同僚の作業員の2名で行っていた。
同僚の作業員が保管庫内に入り、被災者はトラックの荷台上から手渡しでドライアイスを1個ずつ同僚に渡していた。保管庫内にドライアイスが1段敷き詰められたところで、同僚の作業員がトラック荷台上に移り、被災者が保管庫内に入りドライアイスを収納する作業を再開し5分ほど経過したとき、中腰で作業していた被災者の意識が朦朧となり、そのまま保管庫内で意識を失ってしまった。
原因
この災害は、倉庫内に設置されている保管庫内にドライアイスを収納する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | ドライアイスを保管庫内に収納する作業中に、昇華した二酸化炭素ガスが保管庫内に滞留していたため、保管庫内で中腰の姿勢で作業していたときに昇華した二酸化炭素ガスを吸入し、酸素欠乏症に罹ったものであること。 |
2 | 保管庫内の酸素濃度が18%以上になるように換気を行うための設備が設けられていなかったこと。 また、酸素欠乏危険場所で使用するための空気用呼吸器などの保護具が備え付けられていなかったこと。 |
3 | 酸素欠乏危険作業主任者が不在のまま、酸素欠乏危険場所での作業が作業員らの判断に委ねられて進められたため、酸素濃度の測定、換気、空気呼吸器などの保護具の使用が徹底しなかったこと。 |
4 | 被災者ら作業員に対して、酸素欠乏危険作業に係る特別の教育が行われていなかったため、酸素欠乏の危険性に対する認識が希薄であったこと。 |
対策
この災害は、ドライアイスを収納する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | ドライアイス保管庫には、保管庫内での作業を行う際に保管庫内の酸素濃度を18%以上に保持するための換気装置を設けること。 |
2 | 酸素危険場所での作業の際、または酸素欠乏症に罹った場合などに被災者を救出するために使用できる空気呼吸器などの保護具を備え付けること。 |
3 | 通気の不十分な場所でドライアイスを取り扱う作業を行う場合は、酸素欠乏危険作業主任者を選任し、適切な作業方法の決定および作業指揮、酸素濃度の測定、器具等の点検等を行わせ、換気の実施、保護具の使用、特別教育の実施などを確実に行うこと。 |
4 | ドライアイスの保管場所は、昇華して発生した二酸化炭素が滞留するおそれのない措置を講じること。 |
5 | 酸素欠乏症に罹った者を救出する際の2次災害を防止するため、救出用の空気呼吸器の使用方法を含めた緊急時の対応等について、十分な教育訓練を実施すること。 |
6 | 酸素欠乏危険場所における作業は、作業主任者の指揮の下に、作業が行われるように作業マニュアルを作成すること。 |