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労働災害事例

液体窒素が噴出している保冷車の冷凍庫に入り荷下ろし作業中、酸素欠乏症に罹る

液体窒素が噴出している保冷車の冷凍庫に入り荷下ろし作業中、酸素欠乏症に罹る
業種 その他の卸売業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の危険物、有害物等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100729

発生状況

 この災害は、保冷車から冷凍食品を荷降ろしする作業中に発生したものである。
 保冷車に積載されている冷凍装置は、液化窒素式低温輸送装置であり、トラックシャーシーの下に取り付けられた液体窒素容器の中に液体窒素が充填され、容器に取り付けられた電磁弁を経て冷凍庫内天井部に取り付けられたスプレーヘッダーから液体窒素が噴出して冷凍庫内を冷凍するものである。この冷凍装置の作動および停止の操作は、運転席に取り付けられている温度コントローラーにより行われていた。冷凍庫には、冷凍庫内に噴出された液体窒素を外部へ排出する装置はなく、噴出された窒素は冷凍庫の扉を5分程度開け放して排出していた。
 災害が発生した日の早朝、被災者が出勤したところ、納品予定の冷凍食品を積み込んだ保冷車が到着しており、運転者はエンジンをかけたまま運転席で仮眠していた。そこで、被災者は、いつものように扉近くにある荷を降ろそうとして、液体窒素が噴出されている状態の冷凍庫の扉を開けて、高さ1.5mをはい上り、冷凍庫内にある冷凍食品を荷降ろししている間に、冷凍庫内に充満していた窒素ガスを吸入して酸素欠乏症に罹った。

原因

 この災害は、保冷車から冷凍食品を荷降ろしする作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1  液体窒素が噴出されている冷凍庫内に入ったため、酸素欠乏空気を吸入してしまったこと。
2  液体窒素の噴出の作動および停止を行う運転者が仮眠中であったため、液体窒素の噴出を停止することができなかったこと。
3  常日頃から、冷凍庫の扉近くにある荷を降ろす作業を繰り返し行っていたため、酸素欠乏の危険性に対する意識が希薄になっていたこと。
4  適切な作業指示を行うために必要な酸素欠乏危険作業主任者が選任されていなかったこと、保冷車からの荷降ろし作業に関するマニュアル類が作成されていなかったことなどにより、保冷車からの荷降ろし作業が従業員個々の判断で行われていたこと。
5  日頃行われている作業方法についての安全性の検討を行うための管理体制が不十分であったことから、繰り返されていた不安全行動が見過ごされていたため、危険性に対する感覚が薄れてしまったこと。

対策

 この災害は、保冷車から冷凍食品を荷降ろしする作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である
1  冷凍庫内に入るときは、液体窒素の噴出を停止し、扉を開けて庫内に充満した窒素ガスを排出し、庫内の酸素濃度が18%以上になったことを確認した後に冷凍庫内にはいること。
2  冷凍庫については、次の改善を検討する必要があると考えられる。
(1) 冷凍庫内には、冷凍庫内に充満している窒素ガスを排出するための換気装置を設けること。
(2) 冷凍庫の扉を開けたときに、液体窒素の噴出を停止し、換気装置が作動する機構を設けること。
3  窒素などの不活性ガスを使用する冷凍庫内にはいるときは、第1種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業方法の決定など冷凍庫内で酸素欠乏空気を吸入しないように適切に作業が行われるよう作業を直接指揮させること。
4  従業員に対して、酸素欠乏症の危険性およびその防止対策についての教育を実施すること。
5  作業の安全性を検討する体制を確立し、危険作業についてのマニュアル類を整備すること。