石炭船から石炭の荷降ろし作業中、酸素欠乏症に罹る
業種 | 港湾荷役業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の動力運搬機 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他保護具を指定していない | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100726
発生状況
この災害は、製鉄所構内の原料岸壁に停泊中の石炭船から石炭の荷降ろし作業中に発生したものである。石炭船が入港した日、昼勤のA班が石炭の荷降ろしの作業を開始し、準夜勤のB班に引き継がれ、深夜勤の被災者が属するC班に引き継がれた。
B班から引き継ぎを受けたC班は、22時に作業前のミーティングを行い、作業長から人員配置が指示され、9番船倉の荷降ろしの継続および6番船倉の荷降ろしの作業に就いた。
船内荷役作業主任者の指名を受けた作業員Aは、6番船倉でのブルドーザーの運転、作業員Bが9番船倉内での棚落機の運転、作業員Cが9番船倉内でのブルドーザーの運転をそれぞれ担当し、作業を開始した。
23時過ぎ頃に、作業員Aに作業員Cから「作業員Bが見あたらないので探している」との無線による連絡があり、作業員Aは船尾側の9番船倉から、作業員Cは船首側の1番船倉から探し始めた。
作業員Bを探し始めて30分ほど経過してから、作業員Aが8番船倉のデッキ上の昇降口から船倉に至る階段室の昇降用階段の下方15mのところで倒れている作業員Bを発見し、レスキュー隊により救出されたが、酸素欠乏症によりすでに死亡していた。
原因
この災害は、製鉄所構内の原料岸壁に停泊中の石炭船から石炭の荷降ろし作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
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被災者が発見された階段室は、石炭の酸化が進み、空気中の酸素が消費されて酸素欠乏状態になっていたこと。 | |
2
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酸素欠乏危険作業主任者が選任されていなかったことにより酸素欠乏症に対する防止措置が適切に行われなかったこと。 | |
3
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作業を指示された9番船倉に行くためデッキ昇降口から降りようとした際に、8番船倉と9番船倉の昇降口を誤認し、8番船倉の昇降口を降りてしまったものと推定されること。 | |
4
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船倉内での作業を開始する前に、酸素欠乏危険作業主任者および監視人による酸素濃度測定が作業手順に従って行われていなかったこと。 | |
5
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作業長、作業員らの酸素欠乏症に対する危険の認識が乏しかったこと。
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6
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デッキ上にある昇降口に、「作業中」、「立入禁止」、「船倉番号」などの表示が行われていなかったため、船倉の昇降口を誤認して被災したものと考えられること。
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7
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安全衛生管理体制が十分に機能していなかったため、資格を有する酸素欠乏危険作業主任者が配置されていなかったこと。
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対策
この災害は、製鉄所構内の原料岸壁に停泊中の石炭船から石炭の荷降ろし作業のため、船倉に至る昇降階段を下りる途中で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
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石炭など酸素を吸収する物質を入れてある船倉の内部での作業を行うときは、第1種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に、作業方法の決定、作業指揮、作業場所の酸素濃度の測定、測定器具など器具、設備の点検、保護具の使用状況の監視等の職務を行わせること | |
2
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作業手順を見直し、周知徹底すること。 | |
3
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その日の作業を開始する前に、酸素欠乏危険場所における空気中の酸素の濃度を測定し、その結果を記録し保存すること。 | |
4
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作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気すること。 | |
5
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作業場所への出入口には、「作業中」、「立入禁止」、「船倉番号」などを表示することなど誤認防止のための措置を講ずること。
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6
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作業班ごとに酸素欠乏危険作業主任者の資格を有する者が常時配置されていることが確認できるチェック体制を整備すること。
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7
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作業員に対し、酸素欠乏の発生原因およびその防止について教育を実施すること。
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