窒素ガスを圧入した後の粉粒体運搬車のタンク内に入り、酸素欠乏症に罹る
業種 | 貨物軽自動車運送業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100725
発生状況
この災害は、粉粒体運搬車のタンク内の異物を除去する作業中に発生したものである。災害が発生した日、被災者は、消石灰を積み込んだ粉粒体運搬車を運転して運搬先の工場に到着した。そして、積み荷の消石灰の荷降ろし作業を始めた。荷降ろしの作業は、運搬車の排出ホースを工場のサイロ側の口金に連結し、次いで、排出バルブを閉じたまま窒素ガスを運搬車のタンク内に圧入し、タンク内の圧力が2kg/cm2に達したところで排出バルブを開けて消石灰の排出を行った。そのとき、被災者はタンク内で異音が発生しているのを聞いたが、消石灰をすべて排出し、窒素の圧入を止め、排出バルブを閉め、タンク前部の排出バルブと排出ホースの中間に設けられている安全弁を開放し、運搬車を運転して、4時間後に、再度消石灰加工工場に到着した。
消石灰加工工場に到着して、被災者は、異音が発生する原因を除去するためタンク上部の前部にあるハッチを開けてタンク内に入り、タンク底部にあった異物を見つけて拾い上げたところ、突然意識を失い倒れてしまった。
原因
この災害は、粉粒体運搬車のタンク内の異物を除去する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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消石灰を荷降ろしする際に、タンク内に窒素を圧入して行ったため、窒素ガスがタンク内に残存してタンク内が酸素欠乏状態にあったこと。 なお、荷降ろしを終えた以降、安全弁が開放されていたが、安全弁の開放のみでは時間的にタンク内の窒素が空気に置換するまでに至らず、相当量の窒素ガスが残存したいたものと推定される。 |
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2
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タンク内を強制換気し、タンク内の酸素濃度が18%以上になっていることを確認しないでタンク内に入ったこと。 | |
3
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酸素欠乏の危険に関する知識が不十分であったこと。 タンク内が酸素欠乏危険場所であるとの認識が希薄であったため、換気や呼吸用保護具を使用することなく不用意にタンク内に入った。 |
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4
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タンク内でのトラブル発生時に対処するためのマニュアル類が作成されていなかったこと
タンク内での作業の方法については作業員の判断に委ねられていた。 |
対策
この災害は、粉粒体運搬車のタンク内の異物を除去する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 1 | 窒素ガスなどの不活性ガスを注入した粉粒体運搬車のタンク内に入るときは、タンク内を強制換気し、タンク内の酸素濃度が18%以上になっていることを確認した後、タンク内に入らせること。 | |
2 | 窒素などの不活性ガスを圧入したタンク内に入るときは、第1種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に次の事項を行わせること。なお、作業主任者がいないときには、タンク内への立ち入りを禁止するなどのタンク内作業のマニュアルを整備すること。 | |
(1) | タンク内で酸素欠乏空気を吸入しないように、作業方法を決定し、作業を直接指揮すること。 | |
(2) | 作業開始前、作業の再開前などに、酸素濃度を測定すること。 | |
(3) | 測定器具、換気装置、空気呼吸器などを点検すること。 | |
(4) | 空気呼吸器等の使用状況を監視すること。 | |
3 | タンク内に作業員を入らせるときは、空気呼吸器、はしご、繊維ロープなど救出するための必要な用具を備え付けること。 | |
4 | 酸素欠乏危険作業に就かせる作業員に対し、特別の教育を実施すること。 |