台船の修理作業中、バラストタンク内で酸素欠乏症に罹る
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100724
発生状況
この災害は、修理岸壁に繋船された台船の修理作業中に発生したものである。修理岸壁に繋船された台船は、長さが30m、幅が12m、バラストタンクの深さが3mのものであり、バラストタンクは前部および後部が長さ6m、中央部が18mの3室に区分されており、入港時、バラストタンクのマンホールの蓋は閉じられ、タンク内は空の状態であった。
災害が発生した日、被災者は構内下請の作業員らとともに、バラストタンク内の腐食状況を点検する作業を始めることとし、先ず、バラストタンクに設けられたマンホールの蓋を開けるため、蓋を止めているボルトをガス溶接機により切断した。そして、レンチとハンマーを用いて蓋を開けたところで、手に持っていたハンマーをタンク内に落としてしまった。そこで、被災者は落としたハンマーを拾いにタンク内に入ったところ、酸素欠乏空気を吸入してタンク内で倒れてしまった。この様子を見ていた同僚の作業員が被災者を救出するためタンク内に入ったがこの作業員も酸素欠乏症によりタンク内に倒れてしまった。
急遽、タンク内の換気のために用意していた換気装置を稼働させてタンク内に倒れている作業員を救出した。
原因
この災害は、台船を修理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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バラストタンク内は、海水などが入っていた場所であったため、長期間密閉されていたことにより酸素濃度が減少していたこと。 |
2
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酸素欠乏症に関する教育が行われていなかったため、酸素欠乏空気に対する危険性の認識が希薄で、換気する前に保護具を用いることなく酸素欠乏の状態にあるバラストタンク内に入ってしまったこと。 |
3
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2次災害を防止するための空気呼吸器など救助用の機器が備え付けられていなかったこと。 |
4
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適切な作業指示を行うために必要な作業主任者が指名されていなかったこと。
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5
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換気などにより酸素濃度が18%以上になったことを確認する前に、タンク内など通風が不十分な個所へ入る場合のマニュアル類が整備されていなかったため、作業員の判断によって呼吸用保護具を用いることなく不用意にタンク内に入ってしまったこと。
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対策
この災害は、台船を修理する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
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バラストタンクを含め密閉状態または通風の不十分な船倉などへ立ち入る場合には、酸素濃度が18%以上になるように換気を十分に行い、測定を行うことにより酸素濃度を確認すること。なお、換気することが著しく困難な場合は空気呼吸器等を使用させること。 | |
2
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作業主任者を選任し、次のことを行わせること。 | |
(1)
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作業に従事する作業員が酸素欠乏の空気を吸入しないように、作業の方法を決定し、作業員を直接指揮すること。
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(2)
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その日の作業開始前、作業の再開前および作業員の身体、換気装置などに異常があったときなどに、作業場所の酸素濃度を測定すること。
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(3)
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測定器具、換気装置、空気呼吸器などの器具又は設備を点検すること。
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(4)
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空気呼吸器等の使用状況を監視すること。
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3
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酸素欠乏危険作業に作業員を従事させるときは、空気呼吸器、はしご、繊維ロープなど救出するための必要な用具を備え付けること。 | |
4
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酸素欠乏危険作業に就かせる作業員に対し、特別の教育を実施すること。
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