掘削溝内で埋設されたプロパンガス供給配管の補修作業中、放出されたプロパンガスにより酸素欠乏症に罹る
業種 | ガス業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100722
発生状況
この災害は、地中に埋設されたプロパンガス供給管の腐食箇所の補修作業中に発生したものである。災害が発生した日、被災者は、プロパンガスが埋設されているガス漏れ箇所が縦1,000mm、横770mm、深さ700mmに掘削された溝内に入り、さらに400mmほど掘り下げ、埋設されているガス供給管と枝管との接続部が腐食しているのを見つけた。ガス管の接続部は、供給管にエルボにより枝管が接続されていた。
被災者は、この深さ1,100mmの溝の中でしゃがみ込むようにして、ガス供給圧力が280mm水柱のガス管の接続部を取り替える作業を始めた。先ず、腐食している接続部のエルボを取り除き、供給管側の開放口に粘土を詰め込んだ。そして、プラグで仮止めした新しいエルボを取り付けた。次いで、短管に取り付けたHGM継手の一方を枝管に取り付け、他方を供給管に取り付けるためエルボのプラグを外し、HGM継手を取り付けた短管を供給管に取り付けようとしていたが、エルボのプラグを外した供給管側からプロパンガスが吹き出し、このガスを吸い込み、酸素欠乏症により被災者が死亡した。
原因
この災害は、プロパンガス供給管の腐食箇所の補修作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
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プロパンガス供給管の補修作業を行う際に、元バルブを閉止しないでガスが供給されている状況の下で、供給管と枝管との接続部を取り外したため溝内にプロパンガスが放出されたこと。 |
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HGM継手を供給管に取り付けられたエルボに取り付ける際に、狭あいな作業場所で取り付けに時間を要したため、その間に漏れ出したプロパンガスが被災者の呼吸域に滞留し吸入したこと。 |
3
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通風が不十分な掘削溝内での作業に際して、換気するなどにより酸素濃度を18%以上に保持する措置が講じられていなかったこと。 |
4
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配管の補修に際して漏れ出すガスに対して必要な保護具を用意していなかったこと。 |
5
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ガス管の補修作業についての安全作業手順が整備されていなかったため、現場における作業方法については作業員の判断に委ねられていたこと。 |
6
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酸素欠乏症の危険性に対する教育が行われていなかったこと。 |
対策
この災害は、プロパンガス供給管の腐食箇所を補修する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
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プロパンガスの配管の補修を行うときは、事前に作業箇所の危険の状況を把握し、作業方法、人員の配置、工具の選定、保護具の使用などを決定すること。 |
2
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配管の補修に当たっては、原則として補修箇所の直近のバルブを閉止して確実にガスを遮断し、開放側の配管に残留するガスを確実に排除した後、残留ガスがないことを確認してから作業を開始すること。 なお、ガスを確実に遮断する方法としては、バルブ閉止することのほか、閉止板または閉止栓を取りつけることがあり、ガス圧が500mm水柱以下の場合には配管の内部にバッグ又はストッパーを挿入することなどがあること。 |
3
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作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気し、又は作業員に空気呼吸器等を使用させること。 |
4
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ガス配管の補修などの作業に従事する者に対して、ガス中毒、酸素欠乏症などの危険性およびその防止対策などについて教育を実施すること。 |