無煙火薬製造工程において、捏和機(ねっかき)に原材料の仕込み作業中爆発
業種 | その他の化学工業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100720
発生状況
この災害は、無煙火薬製造工程において、捏和機にニトログリセリンを投入した際に、捏和機内で原材料が発火して爆発し、その爆発音により難聴となったものである。災害が発生した日、被災者は、捏和工室内に入り、捏和機内の捏和火薬を取り出した後、次の仕込みに必要な原材料を載せた原料運搬台車を捏和工室に運び、捏和機への仕込み作業を同僚と二人で始めた。
被災者は同僚と2人で、先ず、捏和機内にニトロセルローズを仕込み、10分間の破砕の運転を行った。10分経過して、被災者は捏和機の蓋を開け、捏和機前の踏台に上がり、一袋目のニトログリセリンを同僚から受け取り、袋の底を押して裏返すような方法で捏和機容器内に投入した。ニトログリセリンの固まりが容器の底に着いた瞬間、被災者は容器内で「ボッ」という音とともに捏和機容器内で赤い炎を確認し、さらに続けて橙色の炎が捏和機容器内部から被災者の目線まで立ち上がった。
直ちに、被災者と同僚は外へ退避した。退避しながら被災者が、捏和機の方を見たとき炎が捏和機の周り全体に広がり天井まで吹き上げ1回目の爆発が起こり、続けて、2回目の爆発が起こった。
原因
この災害は、無煙火薬製造工程において、捏和機内でニトロセルローズを破砕した後、ニトログリセリンを投入した際に、捏和機内で原材料が発火し爆発したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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エチルアルコールに浸されたニトロセルローズを保温された捏和機容器内で10分間破砕した際に、気化したエチルアルコールが捏和機容器内で高濃度の状態となり、可燃性雰囲気が生成されていたものと推定されること。 |
2
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ニトログリセリンを入れていた袋が絶縁性の高いポリエチレン製であったこと、容器にニトログリセリンを投入する際に袋からその固まりを剥離しながら作業が行われたことなどから静電気が袋に帯電していたこと。 |
3
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原材料の投入の際に使用していた踏台の脚底部にポリエチレン製の滑り止めを装着しており、床面から絶縁された状態にあったため、袋に帯電した静電気がアースされなかったこと。 |
4
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袋に帯電した静電気が原材料を投入する際に容器に放電し、その火花により容器内のエチルアルコール蒸気に着火しこと。
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5 | 原材料投入作業時の静電気発生のリスク評価が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、無煙火薬製造工程において、捏和機内でニトロセルローズを破砕した後、ニトログリセリンを投入した際に、捏和機内で原材料が発火して爆発したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
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ニトログリセリンなどの爆発性の原材料を包装しているポリエチレン製の袋については、導電性の材質のものに変更すること。 |
2
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原材料の投入作業時に使用する踏台は、導電性の材料を使用した構造のものとし、確実な接地工事を行った鉄板などの上に置き、鉄板と踏台とを電気的に接続すること。 |
3
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捏和機の蓋を開放したときに高濃度の溶剤蒸気への着火を防止するため、蓋を開放する前に溶剤蒸気を強制的に排出する設備とすること。 |
4
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作業員に対する有機溶剤の蒸気へのばく露および高濃度の溶剤蒸気による可燃性雰囲気の生成を防止するため、捏和機の蓋を開放するときには排風機を必ず稼働させること。
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5 | 捏和工室については、温湿度を警報装置付きの自動制御とするなど異常時の措置が迅速に行える設備に改善すること。なお、捏和工室内の保湿および床面の導電性を確保するために、定期的に床面に散水することが効果的であること。 |