くん蒸作業中、臭化メチルを吸入して中毒に罹る
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 組立、工作の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100715
発生状況
この災害は、美術館内の収蔵庫内のくん蒸作業中に発生したものである。災害が発生した日の前日、午前9時に作業員全員が美術館に集まり、前日に引き続きくん蒸の準備作業を始め、くん蒸に必要な準備作業を午前中に終了した。
昼の休憩後、機材の設置および作動状況、目張り箇所、薬品の量などくん蒸作業開始前の確認作業および防毒マスクの点検を行い、午後2時から、臭化メチルとエチレンオキシドの混合剤である薬品の投薬作業を開始し、収蔵庫内の臭化メチル濃度が60mg/リットルに達するまで行われ、投薬を終えた。そして、投薬作業箇所で、臭化メチルの漏洩の有無の確認を30分ごとに4回行った。その結果は、1回目が5ppm、2回目が10ppm、3回目が15ppm、4回目が40ppmであった。
作業員AとCは夜間警備のため美術館内仮眠室に泊まり込んだ。
翌日朝5時頃、作業員Cは、1階ホールに置かれた長椅子で仮眠していた作業員Aが、気分が悪そうに見え、嘔吐した後が長椅子にあったのを見て、病院に収容した。病院に収容された作業員Aは、昏睡状態となり、臭化メチル中毒と診断された。
原因
この災害は、くん蒸のための投薬後、夜間警備のため泊まり込んだ被災者が1階ホールで仮眠中に、漏れ出した臭化メチルを吸入して中毒に罹ったものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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ビニルシートによる目張り方法についてマニュアル化されていなかったため、ビニルシートの端部および継ぎ目部の密着の不十分箇所が見過ごされてしまったことが考えられること |
2
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薬剤が投薬時に気化器内で90℃前後に加温されていることから、この薬剤の温度によりビニルシートの端部および継ぎ目がゆるみ、投薬した臭化メチルが室外に漏洩したものと考えられること |
3
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投薬開始後の検知管による漏えい確認の結果、1回目の5ppmから、4回目の40ppmと時間とともに臭化メチル濃度が増加していたが、目張りの補修などの漏えい防止の措置が講じられていなかったこと |
4
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くん蒸中に、建屋内の立入禁止区域の設定、建屋内での保護具の使用など作業責任者からの適切な指示が行われていなかったこと |
5 |
臭化メチルは比重が空気より重いため階段を経由して階下に拡散する可能性が高いが、この階段の下で無防備で仮眠していたこと
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対策
この災害は、くん蒸作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
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くん蒸の作業行うときは、目張りの方法、漏えいの確認方法、保護具の使用などについてあらかじめ作業計画を作成すること |
2
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温度変化、壁面の状況などによりシール部、継ぎ目部がゆるむことのない適切な材料を用いて目張りすること |
3
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漏えいの点検を行った結果、異常を認めたときは、直ちに目張りの補修その他必要な措置を講ずること |
4
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建屋の一部をくん蒸するときは、関係者以外の建屋内への立入禁止区域を設定し、その旨を見やすい箇所に表示すること なお、立入禁止区域内に入るときは、送気マスクなどの保護具を使用させ、かつ、監視人を配置すること |
5 |
くん蒸中の場所の扉等を開放するときは、流出する臭化メチル等による汚染を防止するため、風向を確認する等必要な措置を講ずること |
6
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臭化メチルの濃度が、60mg/m3または15ppmを超えるときは、その場所に作業員を立ち入らせないこと
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7
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くん蒸作業中の漏えいによる拡散の危険性およびその対応について教育を実施すること
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