反応槽内にアルミニウムインゴットを投入する作業中に反応槽へ転落
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100714
発生状況
この災害は、反応槽内にアルミニウムインゴットを投入する作業中に発生したものである。反応槽は、塩化銅水溶液にアルミニウムを投入して塩化アルミニウム水溶液を製造するものであり、FRP製の幅が1.9m、奥行きが5.3m、深さが1.5mの大きさのものである。この反応槽は、床を掘り下げ据え付けられ、反応槽の外枠が床面から75cm突き出ており、手すり代わりとなっていた。
原材料である塩化銅水溶液は、塩酸を10%程度含有する水溶液である。
災害が発生した日、被災者は、塩化アルミニウム水溶液の製造の準備を始めた。先ず、反応槽へ塩化銅水溶液を仕込み、水を入れ、次いで天井クレーンを使用してアルミニウムインゴット400kgを投入した。そして、反応状況を見ながら、概ね1時間ごとに1個20kgのアルミニウムインゴット5個を投入していた。
午後6時頃、反応槽の方から「熱い」という被災者の悲鳴を聞きつけ駆けつけた同僚が、反応槽へ落ちた被災者が水道水を浴びているところを見て、直ちに病院へ収容したが、1週間後に全身熱傷で死亡した。
原因
この災害は、反応槽内にアルミニウムインゴットを投入する作業で反応槽内に転落し火傷したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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反応槽内は、反応により塩化銅との塩化アルミニウムの混合水溶液となっており、液温が80℃と高温になっていたこと。 |
2
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反応槽の液面が枠上部から70cm下方にあったことから、アルミニウムインゴットを投入するとき、溶液の飛散または反応槽の破損などを防ぐため、腰をかがめて身を乗り出し、反応槽の液面にインゴットを浸けながら投入していてバランスを崩したものと推定されること。 |
3
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作業手順では、インゴット投入作業は反応槽の枠に載せてから滑り落とすこととなっていたが、作業手順どおりの作業が行われていなかったこと。 |
4
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作業手順の内容が、反応を一様に進めるために、反応槽の中央にインゴットを投入する方法でなかったため、作業手順が守られなかったこと。 |
5 |
インゴットの投入時に身を乗り出す作業方法がたびたび見受けられていたが、作業手順の見直し、設備的な改善が行われなかったこと。
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6 |
作業手順の見直しなど組織的に改善する安全管理体制がなかったこと。
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対策
この災害は、反応槽内にアルミニウムインゴットを投入する作業で反応槽内に転落したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 1 | インゴットの投入装置を設けるなどによって、反応槽内に身を乗り出してインゴットの投入作業を行う必要のない設備に改善すること。 |
2 | 反応槽内への転落を防止するため、床面から90cm程度の囲いを設けることが望ましいこと。 |
3 | 作業手順は、現行の作業手順を見直し、無理なまたは不自然な作業姿勢が強いられないように整備すること。 |
4 | 特定化学物質等作業主任者に、関係装置の起動、停止、監視、調整等の要領、対象物質の送給、取出し、サンプリング等の方法、対象物質についての洗浄、掃除等の汚染除去および廃棄処理の方法など作業手順に従った作業方法に沿って作業が行われるように作業を直接指揮させること。 |
5 | 安全衛生推進者を選任し、その者に、施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む。) の点検および使用状況の確認並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関することなど安全衛生管理全般の業務を担当させること。 |