酢酸エチルの入った反応釜へ粉体の原料を投入する作業中に火災
業種 | その他の化学工業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100713
発生状況
この災害は、酢酸エチルの入った反応釜へ粉体の写真用薬品原料を投入する作業中に火災が発生したものである。災害が発生した日、研究員の立ち会いのもと、製造課係員3名により自動システムを操作して反応釜(直径が2m、深さが2.5m、鋼製、ジャケット付き)へ酢酸エチル溶液1,000リットルの仕込みを開始した。酢酸エチルの仕込みを終え、撹拌を開始してから15分ほど経過して、ファイバードラム(直径35cm、高さ75cm、ドラム部上下に金属リング付き)に入った粉体の写真用薬品原料を投入し始めた。
投入する粉体の原料はビニル袋に入れられ真空パックされたものがファイバードラムの中に入っており、この粉体の原料の投入は、ファイバードラムを2人の係員で抱え込み、ビニル袋の口を切り反応釜の投入口へ入れ、ファイバードラムを抱えている係員2人でビニル袋を手でほぐしながら行うものである。
2人の係員がファイバードラムに入った粉体の原料を投入し始めてから6本目のファイバードラムに入った粉体を投入していたところ、反応器の原料投入口付近から発火して、この作業に従事していた係員3名と作業に立ち会っていた研究員1名が火傷を負った。
原因
この災害は、酢酸エチルの入った反応釜へ粉体の写真用薬品原料を投入する作業中に火災が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1
|
粉体の原料を反応釜へ投入する作業を行っているとき、原料の粉体と原料を入れていたビニル袋との摩擦により静電気が発生し、粉体およびビニル袋に帯電していたこと。 |
2
|
粉体またはビニル袋に帯電した静電気が、反応釜投入口またはファイバードラムに取り付けられた金属リングなどに放電したこと。また、作業員に帯電した静電気の放電も可能性として考えられること。 |
3
|
反応釜に仕込まれた引火性物質である酢酸エチルが反応釜内で蒸発し、蒸発した蒸気が反応釜内に滞留していたこと。 |
4
|
粉体の原料の容器に電気的に絶縁性のものを使用していたが、粉体投入作業に伴い発生する静電気の除去対策が不十分であったこと。 |
5 |
作業員は、静電気帯電防止服および静電気帯電防止靴を着用していたが、十分静電気が除去できなかったこと。 |
6 |
酢酸エチルなど引火物を原材料として使用する製造設備の設計段階における静電気の危険性などの検討が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、反応釜へ粉体の写真用薬品原料を投入する作業中に火災が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
|
粉体の原料を反応器へ投入するときは、導電性の素材により造られた容器を用いて、容器を接地するなどの帯電防止を行うこと。 |
2
|
静電気の危険性を軽減するため、粉体の原料を先に仕込むなど反応器への原料の投入順序の変更を検討すること。 |
3
|
反応釜内に可燃性雰囲気が生成しないように不活性ガスで置換すること。 |
4
|
導体部分は、帯電防止のための確実な接地効果が得られるように接地すること。 |
5 |
帯電防止用作業服および帯電防止用作業靴を着用し、床は鋼製床、帯電防止貼り床など導電性のものとすること。
|
6 |
酢酸エチルなど引火性の物を含有するものを取り扱う作業を行うときは、作業指揮者に作業の直接指揮、設備の点検、作業手順の遵守状況の監視などを行わせること。
|
7
|
引火性の物質を取り扱うとき、あらかじめ、静電気の発生などの危険性を把握し、その対策の検討が十分に行われる体制を構築すること。
|
8
|
引火物の危険・有害性およびその防護対策などについて安全衛生教育を実施すること。
|