薬品を製造する作業室を洗浄する作業中、飛散していた原材料の粉体を吸入
業種 | 医薬品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100712
発生状況
この災害は、薬品を製造する作業室を清掃する作業中に発生したものである。薬品を製造する工程は、秤量、粉砕など5工程あり、それぞれ区画された作業室で行われていた。
災害が発生した日、薬品を製造する作業中に、工程検査の確認作業が手間取り、製造工程が一時中断し、この薬品製造工程に従事していた被災者ら4名の作業員が手待ちとなった。そこで、作業室内にある機器の整備、5室に区画された作業室内の床の洗浄を行うことになった。
機器の整備の作業は、通常の作業と同様に、ラインマスクを使用して行われた。整備の作業が終わり、床を洗浄する作業を始めた。
床を洗浄する作業は、2名が組になって、水道の蛇口に接続したビニールホースで床に散水し、各室の床に飛散した薬品の原材料である粉体を各室の排水口へ流すものである。
この床の洗浄は約2時間行われ、作業中、被災者らは、散水時に床に飛散している原材料の粉体が舞い上がるので簡易防じんマスクを着用して作業を行っていた。作業終了後、床の洗浄に従事した被災者らが、鼻血が出るなどの異常を訴えたので、耳鼻科の診察を受けたところ、薬品の原材料である粉体の薬品刺激による鼻出血と診断された。
原因
この災害は、床に飛散した薬品の原材料である粉体を洗浄する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 製造工程での原材料の飛散は、使用機器が密閉設備となっており製造中には原材料が飛散することはなく、機器への原材料の仕込み時に少量の粉体が床などに飛散する程度であったが、この原材料は水に極めて溶けにくい性質を有していることから散水時に舞い上がったものと考えられること。 |
2 | 製造していた薬品の原材料は、MSDS(製品安全データシート)に強い刺激性を有するものであるとされていることから、床製造の際に散水したときに舞い上がった粉体を吸入したことにより鼻中隔粘膜を刺激し出血に到ったものと考えられること。 |
3 | 製造作業の際にはラインマスクを使用することになっていたが、清掃作業時のラインマスク使用が明示されていなかったため簡易防じんマスクを使用し、このマスクが顔面にフィットしていなかったため、マスクと顔面の隙間から粉体を吸入したものと考えられること。 |
4 | 被災者らが、清掃作業ということで取り扱う原材料の危険・有害性に対する認識が希薄になっていたものと思われること。 |
対策
この災害は、床に飛散した薬品の原材料である粉体を水洗浄する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 清掃作業中に原材料の粉体が舞い上がらないように、散水による方法から真空掃除機を使用するなどの他の方法を検討する必要があること。 |
2 | 清掃作業時に防じんマスクなどの保護具を使用するときは、フィットネステスターを用いるなど顔面にマスクがフィットしていることを確認して使用すること。 |
3 | 原材料の仕込み作業など粉体が飛散するおそれのあるときは、局所排気装置を設けるか、呼吸用保護具、保護メガネ、顔面保護具、保護手袋などの保護具を使用すること。 また、清掃作業時においても同様に、粉じんが飛散するときには、呼吸用保護具、保護メガネ、顔面保護具、保護手袋など適切な保護具を使用すること。 |
4 | 作業指揮者に、作業方法および順序の決定、作業手順どおりに作業が進められているか否かの管理、保護具の使用状況の監視などの職務を明確にして、確実に職務を履行させること。 |
5 | 取り扱う物質の危険・有害性およびその防護対策について再教育を実施すること。 |