ヒドロキシルアミン水溶液製造プラントの再蒸留設備が爆発
業種 | その他の化学工業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 化学設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 機械装置等を運転したまま離れる |
No.100711
発生状況
この災害は、ヒドロキシルアミン水溶液製造プラントの再蒸留設備が、真空ポンプの潤滑油交換後、再開運転中に爆発したものである。この工場では、ヒドロキシルアミン85wt%水溶液(母液)を加熱器と蒸発缶との間を循環ポンプにより循環させながら、蒸発缶で母液から蒸発した蒸気を凝縮缶で凝縮させてヒドロキシルアミン50wt%水溶液を製造していた。
災害が発生した日の午後0時頃、白濁が見られた真空ポンプの潤滑油を交換するため、再蒸留設備の運転を停止し、午後3時40分頃から潤滑油を交換する作業を行い、午後5時30分頃に蒸留設備の運転を再開した。
運転再開後約40分経過したとき、再蒸留設備の循環系配管、加熱器および蒸発缶がほぼ同時に爆発し、従業員11名が死傷し、爆発した再蒸留設備は、痕跡をとどめぬほど飛散し、工場内施設の約60%が全半壊した。
また、付近住民など51名が負傷し、工場周辺の民家7軒が全半壊し、1.5km離れた民家の窓ガラスが爆風により破損するなど被害のあった家屋は223軒に達した。
原因
この災害は、ヒドロキシルアミン水溶液製造プラントにおいて、再蒸留設備の真空ポンプのオイル交換後、再蒸留設備の運転を再開する作業中に発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | ヒドロキシルアミン50wt%水溶液を製造するため、母液として使用していたヒドロキシルアミンは、発火・爆発の危険性の高い85wt%の高濃度の水溶液であったこと。 なお、ヒドロキシルアミンは、加熱することにより分解し、強アルカリ性物質、強酸化剤、金属粉、重金属類と反応して発熱的に分解することがある物質である。 |
2 | 発火の原因については、固形不純物に吸着された鉄イオンが局部的に高濃度となったこと、運転再開後、循環ポンプにキャビテーションの発生または異物の混入による摩擦熱または衝撃などが考えられること。 |
3 | 製造プロセスにおけるヒドロキシルアミン水溶液の爆発の危険性など化学的性質に対するアセスメントが十分に行われていなかったため、高濃度の水溶液を母液として加熱して使用していたこと。 |
対策
この災害は、再蒸留設備の運転再開中に高濃度のヒドロキシルアミン水溶液が爆発したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 鉄イオンの増大を防止するため、循環系配管底部での堆積を促進する構造の排除、鉄イオン濃度の適正管理、抑制剤の必要量の確実な添加、装置内面の定期的な表面処理などを実施すること。 |
2 | ヒドロキシルアミン水溶液の循環ポンプは、温度センサーの取り付け、定期的な点検整備の実施など適正な管理を行うこと。なお、水溶液の流路には、破損、脱落の危険があるセンサーなどの突起部分は取り付けないこと。 |
3 | ヒドロキシルアミン水溶液の濃度は、70wt%以下で使用し、適切な濃度管理を行い、水溶液の温度は可能な限り低い温度に設定すること。 |
4 | ヒドロキシルアミン水溶液製造設備は、一時に多量のヒドロキシルアミン水溶液の取扱いを避けること。 |
5 | 蒸留塔、蒸発缶などは半地下方式とし、ヒドロキシルアミンの凝相部が高位置にならないようにすること。 |
6 | 製造設備の周囲には、爆発防護壁を設けること。 |
7 | 蒸留設備の運転は遠隔操作とし、運転条件などを集中管理とすることが望ましいこと。 |