製鋼工場において、鉱滓を処理する作業中に水蒸気爆発
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の起因物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100709
発生状況
この災害は、製鋼工場において、鉱滓を処理する作業中に発生したものである。被災者は、構内1次下請業者の作業員として製鋼工場に常駐し、転炉から溶鋼を取り出した後に残った鉱滓の運搬および転炉の下にこぼれた鉱滓を処理するなどの作業に従事していた。
災害が発生した日、被災者は、通常は他の業者が行っている転炉下近くに仮置きされていた湿ったダストの集積を指示されたことを構内2次下請の作業員Aから聞き、トラクター・ショベルを運転してダストを集積する作業を行っていた。
このダストは、転炉下の側溝を掃除する都度出るものであり、相当量の水分を含んでいた。
被災者がダストを集積している場所へAが、転炉から取り出された鉱滓(約700℃)を積み込んだ鉱滓台車を牽引したディーゼル機関車を無線操縦により運転して近付いてきて、一旦停車させた。そのとき被災者は、Aにそのまま停止しておくように要請し、停車した鉱滓台車にトラクター・ショベルを運転して、集積した湿ったダスト(約100kg)を鉱滓台車内に入れた。その瞬間、鉱滓台車内で大音響とともに水蒸気爆発が発生し、高熱の鉱滓が周囲に飛び散り、飛び散った鉱滓により火傷を負った。
原因
この災害は、製鋼工場において、鉱滓を処理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 高熱の鉱滓を積み込んだ鉱滓台車内に水分を含むダストを入れたため、水蒸気爆発が発生したこと。 |
2 | ダストが仮置きされた場所がレンガ屑置場になっており、邪魔になることから、他の業者が行っていたダスト処理を被災者の判断により鉱滓台車内に入れたこと。 |
3 | 高熱の鉱滓を積み込んだ鉱滓台車内には他の物を入れることを禁じられていたが、従前、被災者は転炉下にこぼれた鉱滓を鉱滓台車内に入れたとき異常を認めなかった経験を有していたことから、安易に鉱滓台車内にダスト入れ込んだこと。 |
4 | 親企業の担当者から、ダスト処理の指示を受けた構内2次下請業者に対し、具体的なダストの処理方法が示されていなかったこと。 |
5 | 水蒸気爆発の危険性についての知識が不足していたこと。 |
対策
この災害は、鉱滓を処理する作業で水蒸気爆発が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 通常の業務以外の仕事を下請業者に発注する場合、親企業は、下請業者の作業員に対して直接指示せずに、下請業者の責任者に対して行うこと。 |
2 | 仕事を受注した下請業者は、親企業から受けた指導に基づき、作業手順書を作成して、作業員に対して周知徹底すること。 |
3 | 下請企業は、作業員に対して水蒸気爆発など作業に関連する危険性および対策について安全教育を実施すること。なお、臨時に行う作業の場合は、親企業と十分連携しながら行うこと。 |
4 | 親企業は、下請業者が行う安全教育の実施に際して、必要な情報の提供などの技術的な指導援助を行うこと。 |
5 | 親企業は、災害防止協議会を設置し、この協議会の協議事項が有効に実施されるように親企業各部門間の連携を十分に行い、現場における統括管理担当責任者による現場の末端における作業間の連絡調整を確実なものとすること。 |