アセトニトリルを用いて遠心分離機内の結晶を洗浄する作業中、中毒に罹る
業種 | 医薬品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100708
発生状況
この災害は、薬品の製造工程で遠心分離機を用いて結晶を洗浄する作業中に発生したものである。結晶の洗浄作業は、反応工程で生成した結晶を遠心分離器に移し、結晶をろ過した後、遠心分離器内の結晶にアセトニトリルをかけながら結晶を洗浄するものである。
災害が発生した日、作業員6名が、反応工程の反応釜で生成した結晶を遠心分離器に流し込み、ろ過した後、アセトニトリルをかけながら洗浄するかけ洗いの作業を行っていたが、かけ洗いだけでは洗浄の効果が十分に得られなかったため、遠心分離機内に手を入れて結晶を撹拌しながら洗浄する練り洗いの方法に切り替えた。作業方法を変えたため、遠心分離器に取り付けられていた局所排気装置のダクトが邪魔になるので取り外し、アセトニトリルを放出用のホースから遠心分離器に流し込んだ。
遠心分離機内の結晶の練り洗いを約1時間かけて2回繰り返し、洗浄の終了した結晶を遠心分離機内から取り出し、乾燥機の棚に移して乾燥を行い、予定の作業を終了して帰宅した。
翌日、結晶の練り洗い作業に従事した作業員4名が、脱力感があるとの異常を訴えたので、病院に赴き診察を受けたところ、アセトニトリル中毒と診断された。
原因
この災害は、薬品の製造工程で遠心分離機を用いて結晶を洗浄する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | かけ洗いによる洗浄方法が、当初予定していた洗浄効果を得ることができなかったため、練り洗いによる洗浄方法に変更したことに伴い、洗浄に使用したアセトニトリルの蒸気にさらされ、吸入したこと。 |
2 | 人体に有害性のあるアセトニトリルを取り扱う作業を行うに際して、遠心分離器に取り付けてあった局所排気装置のダクトを取り外して、局所排気装置を稼働させなかったこと。 |
3 | 有害物を取り扱う作業を行うに際して、作業員が有機ガス用防毒マスクなどの保護具を着用しなかったこと。 |
4 | アセトニトリルを取り扱う作業員が、その有害性について十分な知識を有していなかったため、ばく露防止のための対策を講じていなかったこと。 |
5 | 練り洗いによる洗浄方法に切り替えた場合、局所排気装置の稼働、保護具の使用などの作業手順が示されていなかったため、作業員らの判断に委ねられ保護具の使用などが徹底されなかったこと。 |
対策
この災害は、薬品の製造工程で遠心分離機を用いて結晶を洗浄する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 有害物を取り扱う洗浄方法ごとに、局所排気装置の稼働の方法、保護具の種類の指定およびその使用の徹底、異常時の対応など有害物へのばく露防止のための作業手順を作成すること。 なお、アセトニトリルは危険物に該当するので、火災・爆発などの対処方法についても作業手順に記載する必要がある。 |
2 | 有害物を取り扱う作業に際しては、MSDS(製品安全データシート)に記載されている危険・有害性を確認し、必要な保護具を備え付け、その使用を徹底すること。 |
3 | アセトニトリルなど有害物を取り扱う作業を行う際には、作業指揮者を指名して、その者に、作業手順に基づく作業方法の決定、局所排気装置の稼働状況の確認、保護具の使用状況の監視、異常時の措置などを行わせること。 |
4 | 化学物質を取り扱う作業員に対して、物質ごとにその危険有害性およびその対処方法について教育を実施すること。なお、反応工程で生成する中間物質の危険・有害性についても同様の教育を実施する必要があること。 |