脱脂大豆製造工程において、脱溶剤機内でノルマルヘキサンが爆発

業種 | その他の食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100706
発生状況
この災害は、脱脂大豆製造工程において、脱溶剤機内で爆発が発生したものである。大豆油の抽出は、油抽出機内に仕込まれた大豆フレークの中にノルマルヘキサンを拡散させることによって行われていた。油が抽出されたノルマルヘキサンを含んだ大豆滓は、脱脂大豆製造工程の蒸気(10kg/cm2 180℃)により間接加熱されている脱溶剤機内の9層のトレイに送られ、上層から下層に下りて機外に出るが、各トレイでは回転羽で攪拌し、中間層では直接蒸気(5kg/cm2 130℃)が吹き込まれてノルマルヘキサンが除去されていた。なお、脱溶剤機には、舞い上がった大豆滓微粉を捕捉し、ノルマルヘキサンを噴射して再度脱溶剤機に大豆滓を戻すためのスクラバーが併設されていた。
災害が発生した日、午後5時頃、油抽出機の大豆滓排出用のコンベアが故障したため、脱溶剤機内に残存する大豆粕の排出を行い、直接蒸気の吹き込みだけを止め、脱溶剤機内の回転羽を稼働させたまま修理用の部品の到着を待った。なお、スクラバーへのノルマルヘキサン供給用バルブは閉止した。
午前0時過、修理用の部品が到着し、保全係の2名と下請業者の事業者とで故障箇所の部品の取り替え作業を始めたところ、脱溶剤機内で突然爆発が起こり、部品交換作業を行っていた3名が火傷を負ったものである。
原因
この災害は、脱脂大豆製造工程において、脱溶剤機内で爆発が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | スクラバーへのノルマルヘキサン供給用バルブが完全に閉止されなかったため、脱溶剤機内に漏れ出したノルマルヘキサンが滞留していたものと推定されること。なお、スクラバーから戻された大豆滓とともに送られたノルマルヘキサンが脱溶剤機内に残存していたことも考えられること。 |
2 | 間接加熱が継続されていたことから、脱溶剤機内が140℃を超える状態になっていたため、脱溶剤機内に残存していた大豆滓が蓄熱発火して、滞留していたノルマルヘキサンに引火したものと推定されること。 なお、着火源としては、帯電していた静電気の火花放電によるもの、脱溶剤機内に設けられている回転羽とトレイとの金属接触による火花の発生によるものなども考えられること。 |
3 | 故障修理時におけるノルマルヘキサンの供給停止、大豆滓の排出、加熱の停止など機械装置類の停止基準を具体的に示す作業規定が定められていなかったこと。 |
4 | ノルマルヘキサンの引火および原材料の発火性の危険性に関する事前の検討が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、滞留していたノルマルヘキサンに引火して爆発したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 引火性の物を取り扱う化学設備を使用して作業を行うときは、故障の発生など異常事態が発生した場合における一時的又は部分的に運転が中断された場合の運転中断中および運転再開時における作業の方法および手順を具体的に定めて周知徹底すること。 |
2 | 化学設備およびその附属設備は、爆発・火災の原因となるおそれのある物の有無、バルブ類の異常の有無などについて一定期間ごとに検査を実施すること。 |
3 | スクラバー内でのノルマルヘキサンの爆発を想定し、被害を最小限にとどめるための破裂板を設けるなどの措置を講じること。 |
4 | 帯電した静電気を除去するため、装置の導体部は確実に接地すること。 |
5 |
引火性の物を用いて製造する工程については、あらかじめ、使用する物質による爆発・火災の危険性を評価し、その評価結果に基づいた対策を講じること。 |
6
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引火性の物の危険性、過熱による原材料の発火の危険性およびその防止対策について安全教育を実施するとともに、異常時に備えた退避訓練を定期的に実施すること。 |