塗料製造タンクに二酸化珪素の微粉末を投入する作業中、溶剤の蒸気に引火して作業者が火傷
業種 | 塗料製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100700
発生状況
この災害は、液体塗料の製造工程において微粉末の二酸化珪素を仕込みタンクに投入する作業中に火災が発生したものである。災害が発生した日、仕込みの作業は午前中から作業員AおよびBの2名により始められ、先ず、炭酸ガスボンベに接続されていたゴムホースを仕込みタンク(ステンレス製、内容積5m3)の原材料投入口に差し込み、炭酸ガスボンベのバルブを開いて仕込みタンク内への炭酸ガスの送給を開始し、1回目の原材料の仕込みの作業を行った。
午後2時過ぎになって、4回目の仕込みの作業が手順に従って始められ、2人の作業員が分担してアセトンほか展色剤など原材料の仕込みを順次行った。
沈殿防止剤である紙袋入りの二酸化珪素微粉末を手で支えながら作業員AとBが交互に投入を始め、作業員Aの投入していた袋の中身が3分の2程度になったとき、タンク内に投入されて浮遊している二酸化珪素の微粉末の動きが一瞬止まり、仕込みタンク内から「ボン」という音とともに炎が吹き出してきた。この音を聞き、炎の上がるのを見た周囲の作業員らが消火器を持って駆けつけ10分後に消火したが、この出火により、作業員AとBが顔や手に火傷を負った。
原因
この災害は、液体塗料の製造工程において微粉末の二酸化珪素を仕込みタンクに投入する作業で火災が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 仕込みタンク内に、仕込まれていたアセトンの蒸気が相当量滞留していたこと。 |
2 | 微粉末の二酸化珪素を仕込みタンク内に投入中、微粉末および紙袋に静電気が帯電したこと。 |
3 | 溶剤の蒸気に静電気の放電による着火爆発を防止する対策として炭酸ガスの封入を行っていたが、原材料投入口および排気ダクトなどの開放部からの空気の出入りがあり、仕込みタンク内で溶剤の蒸気が爆発範囲にあったものと推定されること。 |
4 | 絶縁体である二酸化珪素の微粉末を投入する際に、袋および微粉末に静電気が帯電する危険性についての知識がなかったこと。 |
5 | 微粉末の原材料を投入する作業手順に静電気の帯電防止策の記載が不十分であったこと。 |
6 | 作業員は、帯電防止服を着用していたが、帯電防止靴を着用していなかったこと。 |
7 | アセトンなど引火物を原材料として使用する製造設備の設計段階における静電気の危険性などの検討が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、微粉末の二酸化珪素を仕込みタンクに投入する作業で静電気の放電により火災が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 絶縁性の素材の紙袋などから絶縁性の粉体を投入しないこと、あるいは静電気が発生しやすい投入方法を避けること。 また、導電性繊維を混入した袋を使用し接地すること、帯電防止剤を噴霧すること、および可燃性雰囲気が生じないように不活性ガスにより置換することなどを検討すること。 |
2 | 確実な接地効果が得られるように、接地抵抗を1,000Ω以下とすること。 |
3 | 帯電防止服および帯電防止靴を着用し、床は鋼製床、帯電防止貼り床など導電性のものとすること。 |
4 | 接地状況の確認、帯電防止服および帯電防止靴などの保護具の着用、作業方法、作業手順などの見直しを行うこと。 |
5 | アセトンなど引火性の物を含有する物を取り扱う作業を行うときは、作業指揮者に作業の直接指揮、設備の点検、作業手順の遵守状況の監視などを行わせること。 |
6 | 引火物の危険・有害性、およびその防護対策などについて安全衛生教育を実施すること。 |